最近漠然と感じていることが現実化しそうだと思える出来事が続々と起こっている。それは色々な企業活動や製品発表に出てきているが、代表例とも言えるのがグーグルの企業再編であろう。8月10日、グーグルの共同創業者であるラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏はグーグルのオフィシャルブログにG is for Googleという記事を掲載した。
本件は既に各種報道されているので詳細はそちらに譲るが、端的に言うと創業者の2人が代表となるAlphabet(アルファベット)という持株会社を設立し、グーグルはその100%子会社になるということだ。
そしてグーグルの新CEOにはサンダー・ピチャイ氏が就任し、ユーチューブ、アンドロイド、マップ、メール、検索や広告などの事業を継続する。
一方Calico、グーグル Xラボ、Nest、Fiber、グーグル・ベンチャーズやグーグル・キャピタルなどはそれぞれにCEOを持つAlphabetの子会社となるということである。
インターネットは情報収集からサービス活用へ
グーグルの使命に立ち戻ってみよう。会社情報にある通り「Googleの使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることです」ということである。
今回、グーグルはこの領域内にあるサービスを継承し、それ以外の会社はアルファベットの並列子会社になるという決断をした。例えば前述したCalicoは寿命の延長プロジェクト、Google X LabはWikipediaによると8つのプロジェクトに分かれており、「ロボットカー、ARヘッドマウントディスプレイ、無人配達飛行機のプロジェクト・ウィング、従来の風車よりも効率的な発電を可能とするマカニパワーの空中風力発電、血糖値を管理するコンタクトレンズ、気球を成層圏まで飛ばしてネットワーク接続を提供するプロジェクトルーン、人工神経を応用した音声認識や人工知能の開発がある」ということである。
これらは明らかに「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」からは逸脱しているので、企業統治の意味からも理に適っていると思われる。そしてスピンアウトした事業はインターネットがあらゆるモノとつながったことにより可能となるサービスやそのインフラ事業である。
つまり、インターネットやIT化は今まで情報収集及びECという側面を中心に発達してきたのであるが、自動車や家電製品などの物理的な機器と接続された具体的なサービスのステージに入ってきたと考えられるのではなかろうか。
インターネットサービスが代替するものとは?
もし、情報の整理や収集以外の分野にインターネットが発展すると、あらゆる変化が予想される。そしてそれは人間のライフスタイルや雇用といった根本的なサービスに影響する。情報分野の合理化に関して減少したサービスとしては、例えばはがきやFAXによる通販、電話番号案内や交番での道案内、駅の伝言板や公衆電話などが代表例として挙げられるだろう。そこでは失われた職業なども多くあるのであるが、ECやコンテンツ産業、個人物流など大幅に増加した業種もあったのである。
しかし、現在行われているモノのインターネット(IoT)化をベースにしたサービスが普及した場合はどうなるだろう?
特に自動運転や家電のIT化など人工知能によるサービスは、運転手や調理人と言った人間の職を多く奪いながらそれに代替する職業を生まない可能性があると考えている。企業はその恩恵を受ける一方で、社会的には雇用などの観点でひずみが生じる可能性がある。例えば、ロボットの導入で雇用を減らす合理化を行った場合にはロボットに対して“ロボット雇用税”を掛けて失業対策に回すなどの配慮も必要になるかも知れない。
広がるデジタルデバイド:目指すは誰もがセレブな生活?
IoTや人工知能の活用が進むと、どの様な社会になるだろうか。筆者が考えた一つの解は「誰もがセレブ」になれるということである。
例えばある一日を星新一氏のショートショート風に考えてみると、
「朝、スケジューラーと連動された個人アラーム機能付きの腕時計型ウェアラブル端末の刺激で起こされると、自動調理家電が前日の食事情報や睡眠中の体調情報を基にお勧めの朝食を用意してくれていた。食卓に設置されたモニターでは睡眠前からの各種連絡や今日の予定や天気予報が表示されている。玄関を出ようとすると、スマートフォンと財布を忘れたという警報がなる、先週付けた忘れ物防止機能が上手く働いてくれて助かった、もっとも最近決済はすべて電子化あるいはカード情報が登録されているので財布はほとんど使わないのであるが。マンションのエレベーターを降りると、最寄りの駅まで行く自動運転タクシーが待っていてくれた、社内に乗り込み必要な連絡やスマートフォンで家の電気が消されロックとセキュリティがされていることを確認して、乗車する電車の席を予約して駅へ。公共Wifiが搭載された電車の予約席でメールや資料をチェックしていると、玄関に宅配が届いたという連絡が来たので、宅配会社に冷蔵宅配ボックスに入れておいてもらうように依頼。内容は実家から届いた果物のようである。そこで会社のある駅に到着」――。
これはある種夢物語のようであるが、最近発表された技術やサービス組み合わせで可能なものばかりである。ただ誰にでもこの生活が出来る訳ではなく、ネットに常時接続する環境にあり、デジタル機器特にスマートフォンを利用したサービスの登録が必要である。
デジタル機器を使いこなせないとサービスに申し込みや活用ができない。すなわちデジタルデバイドがさらに拡大していくのではないか。
上記のように大きく世の中が変わるときには合理化により便利になる一方で色々なひずみも生じる可能性があり、それを補てんする社会的な制度の導入も必要かもしれない。
筆者が主宰する次世代マーケティングプラットフォーム研究会ではもIoTをテーマに総会を実施するが、登壇者のIoT専門家の意見を聞き、この問題をより深く考えてみたい。