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ad:tech Tokyo/World Marketing Summitから見えてきたマーケティングの新潮流

9月16日から18日にかけて開催されたad:tech tokyo(アドテック東京)と、9月24、25日に開催されたWorld Marketing Summit Japan(ワールド・マーケティング・サミット)を通じて、じっくりマーケティングについて考える機会を得た。

World Marketing Summit Japan(以下WMSJ)では、世界のマーケティングの大きな潮流と日本経済とマーケティングの歴史的な関係を、アドテック東京では実践的な日本のマーケティングの現状や進展を見ることができた。自分の考えを整理しつつ、これらのイベントを振り返ってみたい。

マーケティングの歴史はたったの110年、主には1950年代以降

フィリップ・コトラー教授がWMSJで話すまで意識すらしていなかったが、「マーケティング」という学術分野の歴史は110年に過ぎないという。

確かに19世紀以前は広く物事を知らしめる手法や技術は少なく、「マーケティング」はメディアの発展と共にあるとあらためて実感した。したがって、インターネットの台頭により「ソーシャル」などの新しいメディアが広がる時期にはマーケティングの世界にも大きな変化が起こることが理解できよう。

コトラー教授は、マーケティング発展は主に1950年代以降だとしてその発展段階を解説し、現在をMarketing 4.0の時代であると説いた。

マズローの欲求段階説と共に進化するMarketing

コトラー教授の提唱するマーケティングの変化は、マズローの欲求段階説と同じように進化しているという。欲求段階説は5段階に分類され、低次から述べると、以下の通りである。

1.生理的欲求(Physiological needs)
2.安全の欲求(Safety needs)
3.所属と愛の欲求(Social needs / Love and belonging)
4.承認(尊重)の欲求(Esteem)
5.自己実現の欲求(Self-actualization)

これになぞらえマーケティングの進化を以下のように解説している

Marketing 1.0:消費者のMindを掴む

消費者に商品・サービスを購入・利用してもらうための最も基本的な情報、すなわち商品特性などを知ってもらうこと。マズローの欲求段階説の1「生理的欲求」と2「安全の欲求」に該当する。

商品の機能、大きさ、価格、安全性など事実を中心とした商品情報を知ってもらい、商品を認知してもらう。商品の特徴と優位性を語ることが中心となり、日本がかつて高度成長期には得意であった分野だ。

このレベルの競争では同じ機能のものであれば価格が安い、あるいは入手しやすいほうを消費者は選択することになる。

Marketing 2.0:消費者のHeartを掴む

商品あるいはその商品を構成するブランドに愛着を醸成する。マズローの欲求段階説の3「所属と愛の欲求」に該当する。

その商品自体に加えその商品の持つブランド、商品カテゴリーなど全体のブランドイメージで商品を選択する。同じ機能と価格であればブランドイメージの良いほう、機能が上だったり、価格が下でもブランドイメージの良いほうを選択する消費者が出てくる。

Marketing 3.0:消費者のSpiritを掴む

商品やサービスの持つブランドパーソナリティや提供する会社の世界観に消費者が共鳴する。マズローの欲求段階説の4「承認(尊重)の欲求」に該当する。

その商品・サービス、商品・サービスのカテゴリー、提供会社、利用者(ファン)などを総合的に判断して検討する。価格や性能だけではなく世の中に対する貢献度や環境負荷の低さ、あるいは製品・サービス利用者のライフタイルや利用タイミングに共感することで製品を選択する。

Marketing 4.0:消費者のSelf-Actualizationを掴む

商品やサービスを自己実現の手段として扱う、あるいは消費する。マズローの欲求段階説の5「自己実現の欲求」に該当する。

消費者は単に商品やサービスの利用者になるのではなく、自主的にあるいは意図しない行為を通じて商品・サービスの開発や改善に参加する形をとり、自己実現を行う。ソーシャルメディアなどテクノロジーの発達により消費者の意見を直接取り入れたり、ビジネスモデルとして消費者の提案を取り入れた商品の開発や改善を行っている企業が出てきている。

コトラー教授は日本ではマーケティング1.0の時代(1960-70年代)には輝いていたと述べている。良いものを安く作る技術に優れていたからである。

しかし、ネスレのアンバサダープログラムのようにマーケティング4.0を世界でいち早く取り入れている企業もあるなど、日本での一部の発展には目を見張るものがある。

会場でも日本はマーケティングに関しては後進国との認識が強く、日本企業が早く世界に追い付くためにはCMOのように全社を統合してマーケティングとイノベーションの戦略立案・実践をリードする人材が必要であると説いた。

一方、実践的なマーケティング手法は続々と

マーケティングに必要な戦略と組織が備わっていないとされる中、新規のマーケティング技術の普及は盛んである。アドテックでは過去最高のアドテクノロジーの会社が出展し、業界は大きく進展していることがわかる。

ご覧のように様々な広告テクノロジーの発展により、デジタル上での消費者への効率的な広告配信が可能になっている。それ自体は大変喜ばしいことではあるのだが、一方で多くのテクノロジーやステークホルダーを管理することに労力がかかっているのも現状。

まずは企業と消費者の距離を縮める方法を模索する必要があるのではないだろうか。

また、新しいメディアやそれに伴う広告手法も続々と登場している。多くの流通がビッグデータの活用、オムニチャネルの構築にしのぎを削っており、ITとマーケティングの境目がどんどん低くなってきている。

一方でニュースキュレーションアプリがメディアのカテゴリーとして確立しつつあり、スマートフォンでの展開を睨んだ「ネイティブアド」といった商品が続々と開発され、市場に広がっている。

また広告なのにコンテンツとして広がってゆく「コンテンツマーケティング」もスマートフォンや動画の普及に合わせて広がっている。

リアルタイムマーケティング
アドテックの基調講演でTwitterのMellissa Barnes氏とKIIPのBrian Wong氏は、図らずも「リアルタイムマーケティング」ということで内容が重なったのではないかと考えている。

Twitterはソーシャルメディアの中でも特に拡散性が特徴でリアルタイムメディアであるテレビとの相性が良いことで知られている。大型のスポーツや音楽イベント、ニュースなどの中継に合わせて消費者の心をとらえた企業Tweetは大きく波及していく。

またKIIPは消費者の心理状態が一番広告を良く受け入れる状態での露出をモデルにビジネスを展開している。

筆者も経験上そのような広告は効果があることを検証しており、特に代表チームや選手が活躍する場面での商品露出(ブランドとしての選手応援)は大きな効果をもたらすのである。

KIIPは主にゲームなどの完了画面を用いているのであるが「いつ広告を出すのか?」というところまで来ているのが現状である。

マーケティング4.0を実現させるポイントはオウンドとリアルか?

この他にも、数多くの著名な登壇者やゲストの話聞いたのだが、筆者にとっては、マーケティング4.0を実現するには「オウンドメディア」と「リアルイベント(コミュニティ)」が必要ではないかと感じた。

これは逆説的ではあるが、デジタル、アドテクノロジーが発展し、デバイスの多様化とネット化が進み、コンテンツマーケティングが盛んになればなるほど重要ではないかと考えているからだ。

まずはリアルであるが、こちらはWMSJでネスレ・アンバサダープログラムを紹介したネスレ日本の高岡浩三社長とイタリアのメディアオルナム銀行のオスカー・ディ・モンティグニーCMOが具体的な実例を挙げていた。

基本的には両社ともにロイヤル顧客あるいは見込み顧客をリアルなイベントに招待し、そこでは売り込みをせず(教育やブランディングや体験は提供)に顧客の求めているものを与えて、コミュニティを醸成しているのである。筆者は1990年代のNifty Forumよりデジタルコミュニティに携わっているが、強いデジタルコミュニティには「オフ会」というものが存在しているのである。

まさに両社ともこれを体現してデジタルのみでは醸成できない強さを作りだしている。

また、「オウンドメディア」に関しては前回のコラムで立てた仮説が今回の2つのイベントで検証されたと感じた。

Marketing 4.0ではユーザーを取り込み製品開発や改良に参加(ソーシャル・イベント)してもらい、アドテクノロジーを駆使して気持ちが高ぶった時を見つけてリアルタイムに広告を配信し、各所でコンテンツやネイティブアドを拡散させ、ビッグデータやオムニチャネルを駆使して優良顧客を見つけなければいけないのである。

しかも、顧客は一つのマーケティング施策だけでは商品・サービスを判断しないために商品・ブランド・カテゴリー・企業・ファンの世界観を総合的に見せていかなければならない。

これはメディア上でコンテンツを広げたうえで、それらを集約してリアルタイムにストーリーに仕立てることができるのはオウンドメディアではないだろうか。

土台を作ったうえで各種施策を展開するほうが効率もよく、効果も上がるのでは、と考えるようになったのである。

その時はトラフィックを集約するというよりもコンテンツを集約してつなげてゆくことが大事かもしれない。Marketing 4.0はロングテールでストック型のオウンドメディアを持った上で各種のデジタル施策を行い、リアルのイベントでロイヤルカスタマー(アンバサダー)コミュニティを強化してゆくマーケティングが効果的ではないか。

お知らせ

読者の皆さんの意見も是非聞きたいと思うので、コミュニティを立ち上げたいと思います。興味のある方は是非、Facebookグループ(次世代マーケティングプラットフォーム研究会)を作ったのでこちらへ参加ください。もちろん「オフ会」も実施する予定です。(笑)

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