アップルが金額ベースで携帯電話のトップ企業に
世界的にスマートフォンへのシフトが加速している。2011年1~3月の携帯電話の売上金額では、「iPhone(アイフォーン)」の米アップルがフィンランドのノキアを抜き1位となった。販売台数で首位のノキアは、韓国勢のサムスンやLG電子に続く4位のアップルに依然6倍近い差をつけているが、結果的に付加価値の高いスマートフォンの比率が売り上げの明暗を分けた形になっている。
スマートフォンの販売シェアで見ると、カナダのRIM(リサーチ・イン・モーション)が持つBlackberry(ブラックベリー)のシェアをアンドロイド端末が奪うような形になってきており、ここでも明暗が分かれつつある。日本でも4月に家電量販店での販売シェアでスマートフォンが過半数を占めるようになってきたといわれており、日本メーカーもどんどんこの市場に参入してきている。
当初の携帯電話は当然通話のために利用されてきたのであるが、それも大分変わりつつある。スマートフォンの特徴としてはディスプレーが大きく閲覧性が高いことと、CPUの処理能力が高くグラフィックも含め快適に見られることが挙げられる。最近は、買い替えをせずに2台目の携帯端末として、スマートフォンではアプリ(アプリケーションの略:通信を利用してダウンロードしスマートフォンに新しい機能やコンテンツを提供するプログラム)を利用するために購入している人も増えてきているということである。
そして、そのアプリは毎日多くの開発者が新しいものリリースをしている。アップルのApp Store(アップストア)には35万以上のアイフォーンアプリが用意されており、100億以上のアプリがダウンロードされているようである。もう一方のOS陣営、米グーグルのアンドロイドもアンドロイドマーケットやそれ以外のダウンロード先を急速に拡大している。従来から日本の高機能携帯でもアプリを使うことはできるが、急速に普及した時期にはアプリを格納できる領域が少なく、CPUの処理能力も少なかったのでスマートフォンほどアプリを活用しているイメージは無いのではないだろうか。
各社参入で市場拡大に期待
スマートフォンを取り巻く経済圏は周辺サービスにも急速に波及してきている。ディーツーコミュニケーションズでは事業部を横断した組織「Smart Phone Vector」を開設し、スマートフォン事業に参入するといい、サイバーエージェントとディー・エヌ・エーはスマートフォン向け広告配信会社をスタートさせた。さらにスマートフォン事業には従来携帯と関わっていない企業も参入してきている。セーラー万年筆はスマートフォン・タブレット端末向け事業へ参入しコンテンツ配信事業者に向けてコミュニケーション・プラットフォーム事業を展開するための戦略子会社「セーラーCモール(略称:セシモ)」を設立すると発表した。
国内DPE最大手のプラザ・クリエイトは、スマートフォン販売に向けて国内900店舗を順次改装してゆくという。このようにスマートフォン事業に今までより多くの業態の企業が参入する背景にはそのポテンシャルの大きさがあろう。というのもスマートフォンはタブレット型端末とともに携帯電話の通信機能とパソコン並みの機能や処理能力を持っているからである。
筆者はこのように多くの企業が参入してきたことでスマートフォンの普及が加速すると考えている。多くの企業が切磋琢磨してこの分野に投資を行うことによって、サービスレベルも上がるであろうし、日本の企業にとって何よりも幸いであるのは今までの携帯電話でのノウハウが生かせることに加えて、サービスが世界展開できる可能性が高いと考えるからである。世界的なスマートフォンの拡大とともに日本のサービスが輸出されてゆく日も近いのではないだろうか?
江端浩人「i(アイ)トレンド」バックナンバー
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