日本のインバウンド需要が飛躍的に増えていることを日々実感するようになった。
電車の中では大量にお土産を抱える外国人観光客を目にし、観光名所に行くと多くの外国人観光客がセルフィースティックなどを使って撮影するのを目にするのは今や日常のこと。
特に、渋谷のスクランブル交差点では信号が青に変わるたびに真ん中での撮影にチャレンジする人などがおり、冷や冷やすることもある。
来日する観光客の中には日本の商品を目当てに来る人も少なくない。特に中国や東南アジアからの観光客は“日本で売られている(購入した)”日本製品に対する信頼度が高く、円安も相まって大量に購入する人が出ているという。
では、来日する観光客はどの様に購入するものを決めているのであろうか?
インターネットやSNSの発達により購入は「来日前に決めており」どこで何を買うか事前に計画しているというのである。
先週「春節、爆買いした中国人を捕まえろ!海外ユーザ取り込みセミナー」(主催:ベリトランス株式会社)というセミナーが開催された。その中でインテグレートの藤田康人社長が発表した資料の中から抜粋してお届けしたいと思う。
一人当たりの買い物金額は円安のおかげで全体的に伸びていると推察されるが、中でも中国、ベトナム、タイなどは非常に高い。
これは国民の所得の格差があり、富裕層が日本に来るということと商品の品質が日本で売られているものと比べて低いから、さらには日本商品のブランド志向が強いことなどが考えられる。
海外旅行者の情報収集方法もさまざまであるが、それぞれの国によりメジャーな情報源がある。特に中国は海外のインターネットサービスが制限されているために全く違うエコシステムが存在し、検索はGoogleでなくて百度(バイドゥ)、マイクロブログはTwitterではなく微博(ウェイボー)、チャットはLINEではなく微信(ウィーチャット)といった具合に独自なものが存在している。
各国でマスメディアを含めた色々なメディアが存在しているのであるが、旅行中の買い物に大きく影響するのがSNSや商品の自国語サイトになるという。
典型的な中国からの訪日客のカスタマージャーニーをまとめたものが、左の図である。ご覧のように友人のSNS経由の旅行情報などに触発されて検索し、商品情報を集めてから旅行に行き旅行中でも検索し、買い物をした後にSNSで発信する。
また帰国した後にもSNSで発信するのでSNSには非常に多くの投稿がなされる。
しかも「SNSへの投稿は日本で行う人の比率のほうが高い」(インテグレート・藤田代表)ということである。
検索に関しては検索ワードやリンク先にきちんとした母国語の情報が存在することが肝要である。これで解るように、日本国内の消費に大きく影響しているのは中国の場合には日本に存在しないプラットフォームであり、中国内のページということになる。
しかも、短い期間で大量の買い物をするために買うものや場所もあらかじめリスト化して決めているので、日本に来るときには「その商品は既に買われている」ということになる。
このような現象はまさにグローバル化とインターネット・SNSの普及によってもたらされた新しい経済循環システムと言えるのではないだろうか?
このように、日本に来る前におおよそ購入でするものは決めているのではあるが、中には日本国内でも品薄になっている商品もあるので、そのような場合でもやはりSNSで消費が動いているということのようだ。
最近あるメーカーのマーケティング担当者に聞いたところ、例えば東南アジアや中国で人気のヘルスケアや化粧品などの商品は日本国内で売られている場所が判明するとすぐメールやSNSで情報がシェアされ観光客が押し寄せるという。
場合によっては特定店舗の入荷状況を把握し、入荷日には早朝よりその店舗に外国人観光客の列ができるというのである。
このような状況が続くとメーカーは国内消費者に商品を届けられないので、広告を打つことができず、長期的なブランディングという観点でも問題が起きているという。
このように従来の常識では考えられない消費行動が起きているが、これは決して一過性の事態と捉えないほうが良いだろう。国際化、ネット化が進んだ結果、日本の商品の持つ優位性が浮き彫りになり世界的なスケールで新たな需要が創造された結果ということができないだろうか?
その意味では国内市場向けに開発した商品であっても海外での商品情報の提供や、日本国内での海外向けの商品情報あるいはSNS活用が求められることになる可能性が高い。
欧米のブランド品を日本人が海外で積極的に購入していた時代があったが、日本の国内向け商品が他の国の消費者に支えられる時代が来てもおかしくない状況が起きている。
これをチャンスと捉えビジネス的にもブランド的にも価値を高められれば、日本がよりグローバリズムとネット化に乗じて存在を増す機会が来ていると考えるのは筆者だけであろうか?
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