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任天堂—DeNA、テレビ朝日—サイバーエージェント、バンダイナムコの著作権開放にみる協業の時代

スマートフォンの活用が日常化し、生活者のメディア接触時間に占める比率がどんどん高まっている。2月にデジタルアーツ社が実施した調査によると、女子高生のスマートフォン利用時間は平均で1日7時間ということである。筆者にも今年高校に進学する娘がいるが、スマートフォンでメールやLINEをしないとコミュニケーションが取れない、イベントにも呼んでもらえない、といった状況になりつつあるようだ。

このように生活に入り込んでいるスマートフォンなので、既存のコンテンツホルダーがビジネスとして流通させようとするのは自然なことだ。映画を例にとると、映画館興行—テレビ放映—DVD発売—DVDレンタル—ストリーミング配信と様々なチャンネルに流通させていたものが、スマートフォンに流れただけのことであると捉えることも可能であろう。しかし、それらはコンテンツホルダーがネット専業企業と協業しているケースがほとんどで、しかも協業を発表することによる株価への影響も出ていることに表わされるように、市場にも評価されているのである。今回はこのような事象を任天堂—ディー・エヌ・エー(DeNA)、テレビ朝日—サイバーエージェント、バンダイナムコの著作権開放の3つの事例を通じて考えてみたい。

市場に衝撃を与えた任天堂とDeNAの協業

もう2週間ほど前になるが、市場に衝撃が走るニュースが流れ、セミナー中の筆者のソーシャルメディアのタイムラインがすぐにあるニュースでいっぱいになった。それが任天堂とDeNAによる協業(業務・資本提携)の発表であった。記者会見で見せたスライドの一部を掲載するが、まさにこのスライドに書かれているように、任天堂のIP(知的財産)をスマートデバイス上に展開し、スマートデバイスをゲーム専用機をつなぐ一体型メンバーズサービスを共同開発し運営するということである。

市場のインパクトが大きい理由は、今まで自社ゲーム機以外にあまりキャラクターを出さなかった任天堂が打ち出したということにあるが、ではなぜ任天堂は自前でなくDeNAと組むことを選んだのであろうか? 筆者はそれにはDeNAのスマートフォンへのゲーム展開ノウハウおよび国際展開可能性があると考えている。

スマートフォンへの既存のゲームの展開であるが、DeNAは任天堂のライバルともいえるスクウェア・エニックスの大型タイトルをベースとした“ファイナルファンタジーレコードキーパー”を展開しており、500万ダウンロード以上というヒットになっている事実が大きいと考えている。このまま他社のヒットを流通され続けるのは痛手に違いないからだ。また、DeNAは従来フィーチャーフォンで提供していたゲームプラットフォームについて、スマートフォン版の提供を始めたのは2010年12月15日であったが、その直前の2010年10月12日には最高342億円で、米国のスマートフォンゲーム開発会社ngmoco社を買収した。この買収は当時日本でしか運営していなかったモバゲータウンを海外展開することもあったが、ngmoco社の技術者とノウハウを通じて当時の同社のドル箱であった“怪盗ロワイヤル”をはじめとするフィーチャーフォンのゲームを次々とスマートフォンに移植することにあったのではないだろうか。DeNAはこの買収を通じ海外の技術者を使う手段とノウハウを手にして、これが今後結果的に任天堂の資産を展開するうえで大きな役割を果たすことになるのではないだろうかと筆者は詮索するのである。というのも、言うまでもなくスマートフォンは世界を席巻しており、任天堂のIPも世界を席巻していることを考えると、十分大きなビジネスになりうると考えるからである。

サイバーエージェントと組む道を選んだテレビ朝日

この記事を執筆中の3月31日にまたもやビッグニュースが到来した。それがサイバーエージェントとテレビ朝日、共同出資による新会社2社設立に関する基本合意というものである。両社で設立する株式会社AbemaTV(アベマティーヴィー)は、スマートデバイス向けネイティブアプリとして、様々なジャンルの専門チャンネルを有するサブスクリプション型(定額制)動画配信のプラットフォームを開発するということである。もう1社については名称が未定とのことだが、その動画配信プラットフォーム「Abema」の上で展開するチャンネル第1弾として、ニュース専門チャンネルを運営するという。こちらもテレビ朝日が保有する報道や番組制作におけるノウハウを活用した企画制作を行い、サイバーエージェントが保有するスマートフォンサービスの運営実績および潤沢な開発リソースを活用し新しいニュースコンテンツを提供していくということであり、お互いの強みを掛け合わせた仕組みとなる。

テレビのコンテンツに関しては2012年に日本テレビが日本の営業権を買収し、最近ユーザー100万人を突破したHuluがNHK、TBS、フジテレビ、テレビ東京などのコンテンツを展開するほか、テレビ朝日もコンテンツを供給することになるということで、今秋の日本上陸が推測されているNetFlix社を迎えようとしている。ゲームに次いでテレビもその流通経路とビジネスモデルを大きく転換し始めたとみて良いであろう。

クリエイターに広く門戸を開いたバンダイナムコ

テレビ朝日とサイバーエージェントの発表の直後に筆者の目に留まったのが同日に発表されたバンダイナムコゲームスのカタログIPオープン化プロジェクトであった。こちらは特定の企業と組んだ任天堂と違い、4 月下旬バンダイナムコゲームスのカタログ IPを国内のクリエイターへ開放するというもので、対象タイトルは「パックマン」「ギャラクシアン」「ゼビウス」「マッピー」など全 17 キャラクター。通常の版権許諾とは異なり、キャラクター監修は行わず、 簡易的な企画審査のみでコンテンツ提供が可能となるということである。現在稼働していない資産をスマートフォンアプリやブラウザゲーム、デジタルコンテンツの領域で広く活用してもらいたいという新しい取り組みである。

なじみのあるものを新しいプラットフォームに展開するとうまくいく?

昔からあるIPを新しいプラットフォームに生かすとうまくいくのか。筆者は日本マーケティング協会のセミナー博報堂スダラボの須田和博氏が話していた「最古×最新 = 新しい普遍」という言葉に考えさせられた。本件は須田氏が昨年カンヌライオンズにてPR部門の金賞を獲ったライスコード、つまり日本に古来からある米作とスマートフォンと通販を組み合わせたものであるが(詳細はアドタイのカンヌの記事を参照)、「最古」とはいわなくても、継続して人気や“なじみ”のあるコンテンツを新しいテクノロジーや見せ方で展開することで、新鮮さや新たな価値を提供することができるという内容であった。その意味では今回のコンテンツ×スマートフォンはまさにその構造になっているものも多い。国内だけではなく国際的に展開可能なものも出てくるのかもしれない。

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