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進むコンテンツ接触のスマートフォンシフト 音楽配信サービス、映像配信サービスに新しいビジネスモデルが続々

曲単位の購入から聴き放題のサブスクリプションモデルへ

最近、新しい音楽サービスが続々と登場し、また秋には映像配信サービスが上陸するなどのニュースが世の中を賑わせている。筆者は日本コカ・コーラ在籍時にいくつもの音楽キャンペーン(Coke x iTunes, Coke Music Campaign, Cokeで着うた その場で2曲!など)を手掛けてきた経験から、ここに来ての急なサービス拡張の背景には、映像や音楽コンテンツ接触の「スマートフォンシフト」があるのではないかと感じている。

オンライン音楽の歴史をひも解いてみると、フィーチャーフォンの音楽の中心は着信メロディーが中心であり、2001年にエイベックス ネットワーク(現在のエイベックス・マーケティング)、ソニー・ミュージックエンタテインメント、ビクターエンタテインメントの3社により設立されたレーベルモバイル(現在のレコチョク)が2002年にサービスをスタートしている。

一方PC/iPod向け音楽配信サービスであるiTunesはApple社が2000年に買収した SoundJam MPをベースとしたものだ。いずれにせよ、この頃の音楽は曲単位で購入して楽しむものが中心であり、パソコン経由、あるいは直接音楽プレーヤーや携帯電話で音楽を楽しむものだった。

携帯電話の着信時にメロディーを楽しむ文化は日本のフィーチャーフォン独自の文化であり、それ専用のランキング番組などもあったくらいだ。

一方で、最近続々登場している音楽サービスは曲単位で購入するのではなく、曲の利用権を期間で取得するいわゆるサブスクリプションモデルという形である。

各社それぞれ特徴はあるものの、曲を一曲単位ではなく30分などのブロックでアレンジされたリスト(プレイリスト)を視聴する活用方法が進むのではないかと予想している。このようなサブスクリプションモデルは日本でも導入されており、例えば2006年にはmixi musicという、専用ソフトをインストールし、PCで再生した楽曲情報をユーザー間で共有できるサービスを開始したが2009年12月に終了している。

またレコチョクBESTでは月額980円でPCによる聴き放題サービスを提供している。

海外でのサブスクリプション大手には、2008年にスウェーデンでスタートしたSpotifyというサービスがユーザー数7500万人以上、有料会員2000万人以上で最大手とみられるが、日本ではまだサービスを提供していない。またラジオ型ストリーミングサービスのPandoraも米国を中心に広がっているが、こちらも日本ではサービスをされていないのが現状である。

これは日本の持つ音楽市場と権利構造が違うので簡単には参入できないということであろう。

最近発表された音楽ストリーミングサービスの比較

では、ここで最近発表された3社のサブスクリプションサービス、サイバーエージェントとエイベックス・デジタルとの合弁会社によるAWA(アワ)、LINE社のLINE Music、Apple社のApple Musicを発表資料と筆者の独自取材で比較してみたい。

月末のユーザー数は筆者の推定ではあるが、「AWAサービスの伸びは6月11日のLINE MUSIC開始後も著しく変化があるわけではなく順調に伸びつづけている」(サイバーエージェント上村嗣美広報責任者)、「LINE MUSICは開始当初毎分10万人がアクセスしたのでシステムが追いつかなかった。現在は解消しているが露出を抑えているのにも関わらず順調に伸びている」(舛田淳LINE CSMO)と各社順調に伸びていることより独自に予測した数値である。

各サービスが個性を発揮することよる市場の底上げを期待

前述のように、従来日本における音楽のサブスクリプションサービスは定着してこなかったのだが、本年をきっかけに定着するのではないかと筆者は考えている。

その理由は(1)各種インフラが整ったこと、(2)日本のスマートフォンにおける大手のプレーヤーが参入してきたこと、および(3)3社の特徴ある展開がメディアに取り上げられ認知が上がることが挙げられる。

インフラ面では、4G LTEの導入や接続持続性が上がり、スマートフォンのデータ利用が促進されたことが挙げられる。

音楽ストリーミングサービスはダウンロード型のサービスと違い、楽曲をその都度配信(2回目以降はキャッシュという記録が残るケースもある)する必要があるために、また音質を保つためには高速で安定したデータ通信サービスが必要であり、その環境がようやく整ってきたことが挙げられるだろう。

また、今となっては当たり前になってきてはいるが、やはりスマートフォンのOSの主流であるiOS/Androidでのアプリ同時開発を各社が実施してサービスを同時に立ち上げられることも大きいと考えられる。

次に今回のサービスリリースをした3社は日本におけるスマートフォンとエンターテインメントサービスのメインプレーヤーであり、豊富なノウハウとリソースを投入できるだろう。

サイバーエージェントはアメブロや755で培った芸能界のパイプやアメーバのサービスで得られるスマートフォンの知見などを投入することができ、LINEは5800万人という国内SNS随一のユーザーやコミュニケーションツールを持ち、生活インフラに進化させている過程であり、Apple社はiPhoneで日本のスマートフォンのシェアの多くを握っており、iTunesでは膨大なユーザーベースをすでに誇っている。

さらに、このように3社のサービスが同時に立ち上がることでマスコミにも取り上げられやすく、各社が特徴のあるサービスを出すことでユーザーが“どのサービスが自分に向いているか?“という選択肢を得ることができるのが良いのではないか。

筆者は、日本は三大〇〇といった構成がフィットする社会(多くて4社)と考えており、5社以上になると複雑で一般には覚えにくくメディアも比較しにくいといった側面があると考えている。

今回大型のサブスクリプションサービスが3つ出ることによってサービスの改良や報道合戦も過熱することになるのではないだろうか?

スマートフォンの音楽サブスクリプションサービスはまだ始まったばかりであるが、次回よりそれぞれのサービスの今後の展開や関係者へのインタビューなどによって深掘りしていきたい。

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