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フェイスブックの株価公開を機にSNSの収益源を考える

5月18日、フェイスブックが米NASDAQに株式公開を果たした。グーグルの共同創業者をしのぐ億万長者になったザッカーバーグ氏はその翌日に結婚をフェイスブックで報告した。このように全てが順風満帆に見えるが、公開当初より株価は下がっており(5月25日現在)、フェイスブックの収益モデルの行方に関してさまざまな憶測が飛び交っている。フェイスブックの上場をきっかけにソーシャルメディアの収益モデルを考えてみたい。

何が株価に影響? GMの決断や、収益予想の修正も

ニューヨークタイムズの記事によると米国3番目の広告費を使っているゼネラル・モーターズはフェイスブックに出稿していたおおよそ1000万ドルの広告をやめ、米国だけでファンが39万人いるフェイスブックページは各国で継続するという。この発表が実施のIPOの2日前に行われたことがフェイスブックの収益モデルに関する一つの不安要因になってしまったようだ。

フェイスブックの収益に関してはそれ以前も布石があった。一つは投資家向けの説明会(通称Roadshow)を行っているときに投資家向けの30分ほどのビデオを制作して公開していたが、ネットでの評判が不評だったために下ろしてしまった。ということである。また、IPO以前に全ての投資家に情報が公平に伝えられなかったとして訴訟起こっていると報道されている。これはスマートフォンへのシフトによる収益力の低下が予想されるという内容であった。

ハードウエアが次なる収益源となるか

現在SNSは大きく2つの収益モデルがある。一つは広告収入によるモデルであり、もう一つはアイテムなどの課金による収益モデルである。最初にお断りしておくが、あらゆるSNSはどちらも行っているケースが圧倒的であるが、必要なリソースがそれぞれ異なる。広告の場合には顧客の属性データや営業部隊が必要になり、課金モデルの場合にはコンテンツや課金システムを開発する部隊が必要になっている。現在見てみると大別して、リアルグラフ(実際の人間関係)に基づくコミュニケーション中心のSNSでは「広告モデル」が中心となっており、代表的なサービスとしてはフェイスブック、mixi、ツイッターなどがある。広告モデルが強いのは実際の顔が見える人間から推奨される情報の信頼性が高く、購買に結びつきやすいからである。このモデル会社は社内の開発リソースをコミュニケーションプラットフォームの充実に充て、広告営業部隊を拡大する傾向があると感じている。

もう一方はバーチャルグラフ(現実世界と連動しない人間関係)のアイテム課金モデルであり、モバゲー、グリー、Klab、Ameba(サイバーエージェント)などである。アイテム課金モデルが強いのは、競争性が高いゲームなどはリアルな人間性を壊す可能性があることに対してバーチャルであれば競争して関係が悪化しても実生活に影響を及ぼさないので思い切って没頭できるという点にある。このような企業は、コンテンツアライアンスの営業を増やし、コンテンツや課金システムの開発者を増やす傾向にある。ただしご存知のようにアイテム課金はいわゆるコンプガチャ規制のように規制などで収益性が変動するリスクにさらされているのである。

上場して株主より成長を期待されているフェイスブックは広告に変わる収益の柱を育てようとすることは当然であるし、その布石を打っているという憶測がある。そのひとつにあげられるのがスマートフォン(facebookフォン)のハードウエア分野への参入である。筆者も本コラムで過去にも報告したが、フェイスブックは最近大型の買収を次々と進めおり、写真共有サービスのInstagram、最近ではインターネットブラウザーのOperaや顔認識技術のface.comを買収するという憶測報道も出てきている。これらは独自のスマートフォンに搭載する技術と言えなくもないのである。いずれにせよフェイスブックが今後どのようなビジネスで収益化してゆくかは他のSNSの評価にも影響してくるであろう、動向に注目しながら新しい動きが顕在化したら報告したい。

江端浩人「i(アイ)トレンド」バックナンバー
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第148回 「レコチョクがスマートフォン向け音楽サービスを次々と展開 その歴史を検証する」はこちら

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