2013年を振り返ると、いろいろな意味でデジタルマーケティングが特殊な施策ではなく本流に入ってきたといえるのではないだろうか。
一例として、5月の改正公職選挙法施行でインターネット選挙が解禁され、一般の告知方法として認定された。
また経営の担い手としてのCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)が注目され、デジタルマーケティングとの関係も注目された。
日本経済新聞の“私の履歴書”に連載されたフィリップ・コトラー教授は、昨年6月に開かれた日本マーケティング協会/日本マーケティング学会のセミナーに来日し、日本経済復活の担い手としてCMOの重要性を説いた。
さらには「2030年には広告費の半分がソーシャルに移行する」と予言した。
その他にも全米CMO協会会長を歴任したベッキー・セイガー氏、モンデリーズ・インターナショナルのCMOであるボニン・ボウ氏なども9月の「アドテック東京」に来日し、CMOの重要性を説いていった。
トリプルスクリーンと言われるテレビとインターネットの融合も進み、年末に引退を表明したフィギュアスケートの安藤美姫選手の告白予告が7月、インターネット上で拡散され、報道ステーションの視聴率の急増につながった。
8月2日の金曜ロードショーで放送された『天空の城ラピュタ』では“バルス”がツイッターの秒間ツイート記録を大幅に更新する14万3199を記録した。
ソーシャルの進捗はますます拡大、LINEは世界で3億人が使うサービスとなり、「今でしょ!」「倍返し」「おもてなし」などの流行語大賞に選ばれた各ワードでもソーシャルによる拡散の影響が見て取れる。
ビッグデータがバズワードとなり、そのタイトルがついたセミナーなどは軒並み満席と盛況だ。
アドテクノロジーでは広告配信プラットフォームで広告の表示時に複数の広告ネットワークなどからRTB(Real Time Bidding)を行い、最も収益の高い広告を選択して掲載するDSP(Demand-Side Platform)やSSP(Supply/Sell Side Platform)、顧客データを管理するDMP(Data Management Platform)などが登場して活用され始めている。
パズドラが大流行し、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの株価が任天堂を抜くといった現象も起こり、新旧交代を予感させる年になったのではないだろうか。
そのような激動の中で2014年以降の大きなトレンドとして注目しているのは以下のようなものである。
1 検索する前に答えを予測
まずはビッグデータの活用による「検索」の次の革命的プラットフォーム登場の可能性。現在、主流である検索の本質を考えてみると、それは生活者の頭の中にある疑問が可視化されるということではないだろうか。
したがって疑問が生じたときにそれを解消しようと能動的に生活者がとる行動の代表例が検索といえるだろう。
しかし、置かれている状況によって、特定の生活者の頭に次に生じる疑問を予測できるのではないかと考えられないだろうか。「今、どこにいて何をしているか」をその人あるいは類似母集団の過去のデータを基に、検索する前に答えを用意する技術が登場すると考えている。
例えばオリンピックなどでその人の興味範囲にある選手が競技をする直前では大会やライバルの状況を出しておくことが可能であるし、その中継番組で流れる情報やCMと連動するコンテンツをあらかじめ配信することなども可能であろう。
本人が「大会情報」や「商品情報」を検索する前に用意することでより早く必要な情報にたどり着くことが可能になる。これはすぐに実現しなくともそちらの方向に大きく舵を切ることは間違いないのではなかろう。
2 生活者のメリットを最大化
次にCSP(Consumer Side Platform)の登場。広告主や媒体のメリットを最大化するプラットフォームはすでに登場しているが、情報の受け手である生活者のメリットを最大化するプラットフォームの登場も待たれるのではないかと考えている。これにはプライバシー保護の観点も含まれる。
最近のアドテクノロジーの進化、最近筆者の見るサイトに表示される広告に極端な偏りが出てきていると感じていることも背景にある。それは主に「年齢・性別」によると判断される例えば健康食品系など、「仕事や興味」に関連する訪問したサイトのリターゲティング系関連と「最近検索した内容」に紐づく広告である。
毎回同じような広告が表示され、しかもそれらは興味がない、もしくはすでに解決済みのケースも多いのである。
むしろ、自分が求めている情報に関する広告が表示される仕組みを構築できないかと考えた結果CSPという形態が見えてきたのである。
これらのほかにもネットを活用する上での生活者としての各種問題、例えば複数のサイトのログイン管理や個人を特定できる情報の保護などと合わせて解決するプラットフォームが登場する機会があるのではないかと考えるのであるがいかがだろうか。
3 テクノロジーに精通したCMOの登場
最後にCIMOの登場である。先述したように現在は経営の担い手としてのCMOは不可欠なのであるが、マーケティングは既に技術とのかかわりは不可欠なのである。
クリエィティブ部門ではまだ人間の感性に頼る部分は多いが、それを検証するための手法や技術は大幅に進展していることは皆さんもお分かりのこととおもう。
仮説を立て検証し修正してゆくプロセスはますます複雑化しながら高速化してゆく。このような状況の中では技術とマーケティングの両面から総合的な判断が求められるCIMO(Chief Information & Marketing Officer)といった役割も必要になってくるのではないか。
実現手段としては、CIOとCMOがチームを組むことも考えられる。
実はこの他にも列挙したい内容は山のようにあるが紙面の関係でここまでにしておきたい。2013年に活況だった内容もますます進展してゆくであろうし、衰退するものもあるであろう。皆さんもこの業界に目を向けておいていただきたいと考える次第である。