前回の記事「2014年のマーケティングの潮流を占う3つのトレンド」はこちら
「ひな祭り」の3月3日、日本経済新聞の「私の履歴書」にも連載された近代マーケティングの父、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院のフィリップ・コトラー教授が来日し、「フィリップ・コトラー マーケティング・フォーラム2014」が恵比寿ガーデンプレイスで実施された。
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コトラー教授は昨年も来日しており、その様子は以前コラムにも記したが今回もまた新しい視点での講演をされたのでそちらを紹介したい。
前回のテーマはCMO(Chief Marketing Officer=最高マーケティング責任者)の必要性・重要性であったが、今回のテーマは「イノベーションで勝つ:Winning at Innovation」で、コトラー教授の他にもネスレ日本の高岡浩三社長、コンサルタントのローラ・ライズ氏、グラスゴー大学のルイズ・モウティンホ教授、チュラロンコーン大学のスヴィート・マイアンシー教授、早稲田大学ビジネススクールの内田和成教授がこのテーマで講演やディスカッションを行った。
イノベーションで勝つためのAからFを提唱
教授はまず、企業は今まで行ってきたことをやり続けるほうが得意で従来イノベーションは苦手としながらも、イノベーションから逃げることはできないと釘を指した。
技術・流通・経営などあらゆる革新が速い世の中では、競合優位性を保てる期間が短く、イノベーションをしなければ企業は衰退するからである。一方でイノベーションうまく実践している企業も数多くありその例としてWhirlpoolやShell Oil, SamsungやHarley Davidson, LEGO, Fiat, NIKEなどを挙げていた。
その中でも新しいイノベーション手法としてCo-Creation (顧客などとの共同創造)、Crowd Sourcing (不特定多数のアイディアを活用する手法)を挙げており、取り入れるべきと説いていた。また、社内では特にイノベーター(商品やビジネスモデルの開発担当者など)、マーケターとファイナンスの関係者が共創する環境を作ることが重要としている。
そのうえでイノベーションを実践する際に以下のAからFまでの役割を用意しプロセスを実践すべきだという。
A: Activators アクティベーター
• 物事を始める人たち、イノベーションの音頭取り(Initiation)の役割。
B: Browsers ブラウザー
• 情報収集(Information)、調査、検証をする役割。
C: Creators クリエーター
• 情報に基づき今までにない新しいアイデア(Ideation)を提供する役割。
D: Developers ディベロッパー
• アイデアを検証し、実行可能な発明や計画に落としてゆく(Invention)役割。
E: Executors エクセキューター
• 実施計画に基づき、着実に実行する(Implement)役割。
F: Financiers ファイナンサー
• 計画を財務面よりサポート、投資効果(ROI)を検証する役割。
現代に欠かせない要素:BUZZ
さらに教授は上記のようなイノベーションを実施する際の成功の秘訣として必要なことはバズ(口コミやソーシャル書き込みなど)であるとし、以下の3つの人たちの協力を得ることが重要であるとしている。これは特に最近のようにソーシャルメディアが普及しているのでなおさらであろう。
Mavens:ある分野に関する専門家、人より早く情報を知ることがモチベーションになるので、そのように巻き込み、彼らの意見はよく聞かねばならない
Connectors: 影響範囲が広い人で情報伝達能力が高い人たちであるが、必ずしも専門家としては見られていない。
Sales People: 営業部隊が熱心に語ることで人々に興味を沸かせることが可能である。
しかし、一番驚かされるのは、コトラー教授の元気さである。筆者は日本マーケティング協会の縁があって前日のレセプションより参加することができたのであるが、そのレセプション中も教授は座ることなく参加者と活発に意見交換をされていた。
カンファレンスでも一時間のプレゼンやパネルディスカッションを精力的にこなし、自分のプレゼンもディスカッションももうすぐ83歳という年齢を感じさせることなく明晰な分析を行なっていたのである。やはり“神様”と目される人物はどこか違うのであろう。次回は他のスピーカーの内容とパネルディスカッションに触れたいと思う。
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