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マーケティングツールとしても発展する“購入(EC)型”クラウドファンディング

本記事は企業のマーケティングに活用できるツールとして最近活用が拡大している購入型クラウドファンディングを紹介するものであり、クラウドファンディング全体に関するものではない。また、クラウドファンディングには“寄付型”や“投資型”のものも存在し、クラウドファンディング業者によりそれぞれ行っているジャンルは様々で、特定のプロジェクトや業者を推奨するものではない。クラウドファンディングは日本においては資金決済に関する法律などによって個人間の送金や投資が制限されている。
皆さんは最近“クラウドファンディング”という言葉を耳にしたことはないだろうか?Wikipediaによると “クラウドファンディング(英語:Crowdfunding)とは、不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを指す、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語である。ソーシャルファンディングとも呼ばれる”ということである。まだ確固とした業界データはないが、日本国内の推計でVisualizing.infoによると、2015年1月の月間支援額は1億5000万円を超え、全事業者の累計の支援額は23億円を超えている模様である。

ビジネスモデルとして支援プラットフォームは、プロジェクトの10~20%の手数料を徴収している。また、世界最大のクラウドファンディングプラットフォームであるKickstarterによると、今まで集めた資金は15.4億ドルで、成功率(目標額に達したプロジェクト)は39.16%だそう。

主に“寄付型”“投資型”“購入(EC型)”の3種類に分類される

クラウドファンディングは主に3種類に分類される。いずれも参加者がそのプロジェクトを支援するということが動機となるが、分類の根拠は個人の支援に対する見返りの形態であり“寄付型”“投資型”“購入(EC)型”に分けることができる。“寄付型”は文字通り“寄付”であるために原則見返りを求めない(プロジェクトにより個別レポートなどに対応するケースもある)もので、“投資型”は集まった資金を使ったプロジェクトの成果次第で“金銭”や“商品・サービス”の見返りを分配する。これらに対して“購入(EC)型”は、プロジェクトが提供する権利や商品・サービスを購入することで見返りがあらかじめ定められているものである。

本コラムでは前書きでも記載した通り“購入(EC)型”に特化したものである。また似たような仕組みで“融資”を行う事業もあるが、本コラムはこれに対するものでもないことを記しておく。

クラウドファンディング発達の背景:ネット決済やソーシャルネットワークの普及

上の図(提供:Makuake)はその仕組みを簡単に示したものであるが、ご覧のように、基本的には不特定多数のサポーターより比較的少額のプロジェクト支援が行われるということが特徴である。このように各種プロジェクトに関する支援者を募ることは、例えば町内会のお祭りに対する寄付など古くから行われていたと思われるが、最近“購入(EC)型”クラウドファンディング(以後ECF)が普及してきている背景に関しては“ネット決済”と“ソーシャルネットワーク”の普及があると筆者は分析している。

ECFではプロジェクトの支援を集めるために資金決済を行う必要があるが、インターネットを通じた決済手段がユーザーにも普及してきたことにより、企業側も集金しやすくなってきているという背景が挙げられる。主な決済手段はクレジットカード、コンビニ払
い、銀行振り込み、ネットバンク振込(写真はMakuakeの提供する決済手段)であり、「決済方法の多様化はECFの普及の重要な要素の一つ。」(坊垣佳奈Makuake取締役)としている。

同様に重要なのは、ソーシャルネットワークの普及である。というのもECFは特定の興味を持つ人たちが集まって支援するという構造であるからだ。ネット上での個人の興味を可視化するものとしてインタレストグラフというものが存在するが、同じような興味を持つ人たちをつなげるソーシャルネットワークがそれらの人たちをつなげてプロジェクトの存在を拡散する役割を果たしているのである。写真は日本初のクラウドファンディングサービスREADYFORのログイン画面であるが、ご覧のようにまず、Facebookでの登録を促している点に注目したい。これは個別のメールなどにより個人とつながりよりもその人のインタレストグラフが内包されるソーシャルネットワークとつながるほうが、拡散しやすいからということではなかろうか。

この様な仕組みは決して新しいものではない。古くから日本でも町内会という地域インタレストグラフを活用し、夏祭りなどのイベントを回覧板という手段で告知し、協賛することによってうちわや焼きそば、綿菓子などの商品、射的や盆踊りなどのサービスを享受することがあったのではなかろうか? ECFはその仕組みをネットに置き換えてより広い範囲でより多くの人々を巻き込む仕組みであると理解するとわかりやすいのではないだろうか。

目標額に達しないと1円も振り込まれない、実施者の審査が重要

クラウドファンディングの仕組みでは、一般に募集期間中に集まった金額がすべて振り込まれるAll-in型と、目標額に達しないと振り込まれない(集金されない、あるいは返金される)All or Nothing型があり、ECFでは原則All or Nothing型であるという。ECF型では支援に応じた見返りが決まっており、目標金額に達しないと見返りを提供できないためにそのような仕組みが取られている。kibidangoの松崎良太CEOは、「目標額が集まらないと手数料もゼロなので、プロジェクトを成功に導くためのアドバイスやコンサルティングには力を入れている」と語りさらに同社のポリシーとして「等価交換モデルしか実施しない」ということである。筆者もまさにこの点がECFを“寄付型”“投資型”との大きな違いであり、ECFがマーケティングツールとして健全に育つための大きな必要条件ではないかと考える。

独自のプラットフォームだけではなくASP提供モデルも進行中

ECFは様々なジャンルで行われており、物理的な商品以外にもコンテンツや作品(映画、音楽、イベント、芸術作品など)の制作事例も多く出てきているという。
その分野で多くの実績を持つGREEN FUNDINGでは、「作品の世界観を担保するために自社プラットフォームで展開を希望する事例も多い」(沼田健彦CEO)ということで、自社サイトにてECFを展開できるサービスをASP提供しており、「楽天のようなプラットフォーム展開を目指す」(沼田氏)としている。プロジェクトを実行する企業も自社のブランドを活用して展開できるためにこのような方式も有効になってくる可能性があるだろう。

企業活用は様々な観点から活用可能

いうまでもなくECFの活用の意義は展開する資金の調達にあるのであるが、最近資金力のある企業で違う目的で利用する事例が増えてきているという。前出の左の図はMakuakeの資料より抜粋したものだが、同社の坊垣氏によると特に最近増えてきている事例は「商品PRやテストマーケティング」であるという。例えばプロトタイプは作ったが販売に向けた投資をする価値が立証できないケースでは、ECFを通じて需要を検証することができる上に新しいコンセプトなどあればPR効果もできるので、活用されるケースが多いということである。また、ECFで需要を確認できることにより「取り扱いたいという業者が出てきたり、銀行融資を受ける際の実績づくりになることもある」ということである。

Markting 4.0:自己の実現を達成するのがECFか?

筆者はクラウドファンディングには注目していたものの、正直ここ数年は紹介することをためらっていた。というのもクラウドフラウドファンディングは一般より広く資金を集めるために悪用すればできなくないことや、法的な規制にかかる可能性があるためだ。しかし、最近では支援に対する見返りが明確なECFが普及してきており、また優良な審査を実施する業者も多数出てきており、あくまでも自己責任が原則ということであるものの紹介するに足る業界に育ってきたのではないかと感じている。

また、ECFは消費者が主体的に商品の開発や流通に参加できる手法としてこのコラムで以前に紹介したMarketing 4.0:参加者が企業と一緒に自己実現をする仕組みの一つではないかと考えているからである。消費者が欲しいと思う新製品に支援して、出てきた商品を消費しそのファンとなりアンバサダーとなり広げてゆく構造こそすべてのステークホルダーを満足させるMarketing 4.0の仕組みではないかと考えている。そこで筆者は2月14日、教授を務める事業構想大学院大学で特別講座を実施したところ、多数の学生の参加により予定時間をオーバーする非常に活性化された議論や交流が展開されたのでその手ごたえをより実感している次第である。

事業項構想大学院大学で行われたECFのワークショップ時の写真 左からkibidango松崎CEO、Makuake坊垣取締役、沼田Green Funding CEOと筆者

また、前述のコラムをきっかけに発足し、2月23日にメンバーが1000人を超えた次世代マーケティングプラットフォーム研究会でも、3月12日に上記3社に先日「電通報」にも掲載されたREADYFORの米良はるかCEOを含めた4社を招聘し第三回総会を実施するので、そこで発表される事例などを参考に自社のマーケティング活用にクラウドファンディングの導入を検討したいという方は是非参加をご検討いただきたい。

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