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「AISASモデル」は、AI(人工知能)時代にどう変わる?

次世代マーケティングプラットフォーム研究会第8回総会が5月20日にフリークアウト六本木オフィスで開催された。

本研究会はアドタイのこちらの記事がきっかけでできたFacebookグループでもうじき参加者が4,000名に届く研究会である。参加者は企業のマーケターやマーケティングに従事する企業、さらには学生など多岐にわたる。

テーマは数カ月に一度開かれる総会で主にメンバーの投票により決められ、今回は「AI(人工知能) / ディープラーニング」となった。基調講演とパネルディスカッション及び特別講演の参加申し込みは185名を数えた。これは生活やビジネスのみならずマーケティングにもAIが入り込んでくるという意識の表れだろう。内容が豊富であるのでここですべてを紹介することはできないのであるが、今回は主に基調講演の内容を紹介することとしよう。

<第8回総会式次第>
キーノートセッション:~人工知能は私たちを滅ぼすのか~
・「人工知能は私たちを滅ぼすのか」著者 IT製品開発マネージャー 児玉 哲彦 氏
パネルディスカッション:
・電通イベント&スペースデザイン局 エクスペリエンス・テクノロジー部 シニア・マネージャー 日塔 史氏
・リクルートホールディングス 石山 洸氏
・Gunosy 代表取締役CEO 福島 良典氏
・日経FinTech編集長 原 隆氏(モデレーター)
特別講演:事例紹介ロボホン
・シャープ 通信システム事業本部  副参事 景井 美穂氏

児玉哲彦氏が予測する未来とは?

基調講演は書籍「人工知能は私たちを滅ぼすのか」の著者、児玉氏が人工知能年表を基にコンピューターから始まった人工知能の歴史を解説。半導体の進化をつかさどる“ムーアの法則”(最も有名な公式は、集積回路上のトランジスタ数は「18か月(=1.5年)ごとに倍になる」)というものである。

著書を手にする基調講演の児玉氏、ロボホンを手にする特別講演の景井氏

これを式で表現すると、n年後の倍率 p は、p = 2^{n/1.5} 。したがって、2年後には2.52倍、5年後には10.08倍、7年後には25.4倍、10年後には101.6倍、15年後には1024.0倍、20年後には10 321.3倍ということになる(出展:Wikipedia)。また、ネットワークの価値増大を説明するメトカーフの法則(ネットワーク通信の価値は、接続されているシステムのユーザ数の二乗(n2)に比例)によって進化を遂げ、今後「ディープラーニング(深層機械学習)」により「音声・画像認識」が大幅に向上し、「自然言語処理」が活性化するのではないかということであった。

パネリスト左からグノシー福島社長、リクルート石山氏、電通日塔

そして人間が身体的な処理能力から進化していっているのに対して、コンピューター・AIは記号処理から進化し、音声・画像・言語処理も現在取り込み始めている。人工知能は解析処理よりも人間の基本的な認識、運動能力の方が苦手というモラベックスのパラドックス(伝統的な前提に反して、高度な推論よりも感覚運動スキルの方が多くの計算資源を要する。出展:Wikipedia)により、実は高度とされている技能への応用が始まっている。例えば米国の弁護士事務所は自然言語処理の活用でアドバイスを行い、医療分野では画像処理を活用して人間の目では見逃すこともある病気を見つけることなどがあるという。

モデレーターの原編集長

但し、そこには意思決定は含まれずあくまでも人間をサポートするということだという。その他にも応用が進む分野は、犯罪防止や自動運転でこちらも着々と実績が出始めているということである。

AIでAISASモデルはどう変わる?

児玉氏はAIがマーケティングに及ぼす影響について、AISAS(R)モデルのプロセスの変化を予測する。ちなみにAISASのプロセスとは電通が提唱し、2005年6月に商標登録した購買行動プロセスを説明するモデルのひとつであり、インターネットの普及により“Search”や“Share”といった行動を加えていることが特徴である。

Attention(注意)はConcious(意識)からUnconsious(無意識)へ、Device(端末)からAgent(代理人)へ

今後、車などをも含む接触デバイスの多様化により一つのタッチポイントではサービスが受けられないという現象が起こってくるのではないか。そして今までは、人間は意図的に注意して情報を取りに行っていたが、今後は意識しない形で入手するようになり、音声対話のようなインターフェィスに変わってくるのではないかということである。具体的にはアップルのSiri、アマゾンEcho、 チャットボット、 ロボホンなどのようなインターフェィスが考えられるということである。

InterestはSocial(集団意識)からBias(偏向、集合的無意識)へ

ソーシャルグラフによるレレバンシーからよりターゲティングされた施策が中心になってくる。個人単位で最適化されるので平均値はマッチングされなくなり、もの凄く突出した物でないと浮かび上がらない。児玉氏は米国で日本のBabyMetalというグループが人気を博している理由をこの現象の表れとして説明している。

Search(検索)はContextual Recommendation(行動に基づいた推薦)へ

グーグルのCEOはモバイルファーストからAIファーストの時代に入ったといっており、検索という意図的な情報よりも意図しないでスマホなどから収集される情報を活用したものになるだろうということである。例えば、飛行機に乗る予定が入っていれば、いつ出発してどの様に行けばいいのか、勝手に教えてくれるインターフェィスが登場するのではないか。

ActionはConversion (成約)からContract (継続的な関係構築)へ

無意識の世界になると、今後は一回の消費行動ではなく、継続課金のような契約関係を結び、常にコンタクトできることが重要となる。同時に、マーケティングの効果測定やKPIも変わってくるのではないかということであった。

ShareはCreation (意図的に作る)からContext Capture(体験のキャプチャー)へ

ブログやツイートなど意識の資源を使う行動は限界を迎え、だんだんやらなくなってくる。HTMLからブログ、ツイッター、インスタグラムやタンブラーなどどんどん楽な方向にシェアは向かっている。AI時代にはその人が体験していくことのコンテクストを、キャプチャーするだけでコンテンツになってゆく時代になるのではないか。

そしてAIの時代には、ソーシャル時代にあったような消費者が意識した形での能動的な消費行動は無くなってくるのではないかということである。すなわち、サービスを使っているとか買っているとかを意識せずに行動する時代が来るのではないか?そこではエージェントやコンテキスト情報、データをどうとってくるか、そしてレコメンデーションによる継続的な体験やコントラクト、キャプチャーのようなことが、メディアと情報サービスの設計で重要になってくるだろう。

そしてそれをあらゆるデバイス、時計から車、テレビ、PC、モバイルなど、あらゆるものにまたがってサービスが存在しており、それを実現するための計算力を身につけていることだ。

筆者はこの中では特にSearchの部分には大きく賛同し、この分野が最も早く変化しているのではないかと思うが、皆さんはいかがだろうか?

次回はパネルディスカッションと特別講演に触れてみたいと思う。

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