先先週行われたCES(Consumer Electronics Show)で各社がインターネットやスマートフォンに接続して活用する各種ウェアラブル端末を発表し注目されており、Apple社もApple Watchの発売を控える一方でGoogle Glassが発売をいったん中止するなどの報道もされている。このように本年はウェアラブル端末が話題となり本格化するいわゆる“ウェアラブル元年”になることが期待されるが、今回は登場する機種よりもそれらが社会的な問題にどのように寄与できるかという視点から考えてみたい。
何故ウェアラブル端末なのか?
ウェアラブル端末には色々な種類があり、眼鏡型、腕時計型、リストバンド型、指輪型、ヘッドバンド型などの各種の形状がある。
それぞれの中から、筆者が注目するものをいくつかピックアップしたい。
右の写真の眼鏡型端末は、東芝が本年中に発売を目指しているというToshiba Glassである。特徴は小型軽量で投影に特化しており視野を遮らなく長時間稼働が可能であるということである。
右の写真はソニーが出展した“SmartSmart B-Trainer”というイヤホン型の端末で、ランニング中の心拍数に音楽を自動選曲する機能や、音声ガイダンスによって、ランニングの継続、上達をサポートする機能を搭載しているという。
右の写真のLogbar社のRingは指輪型の端末でスマートフォンなどと通信することにより人間の動きを検知し、各種端末の操作が可能になる指輪型リモコンとでもいうもの。
このように色々な端末が我々の日常生活をより楽しく便利にしてくれる機能を搭載しており、これらが実現することにより、より便利な社会になってゆくことが予想される。ウェアラブル端末は、持っていることを意識しない方法で作動することにより威力を発揮できると考えており、その意味で何でもできる一方いちいち操作しなければならないスマートフォンとの連携はしても棲み分けをするのではないかと考える。
一方でウェアラブル端末が引き起こす問題というものも考えられる。例えば眼鏡型端末では歩行中あるいは運転中に利用することにより事故などの懸念があるが、メーカーも訴訟のリスクなどを想定すると慎重にならざるを得ないであろう。あるいはGPSやカメラの搭載によるプライバシーや盗撮の問題などが事件として社会問題化する可能性もあると考えている。
個人の課題解決から社会的な問題解決へ
現在商用化にて個人の便利さの訴求が多くされているのであるが、筆者はウェアラブル端末は多くの社会的な問題を解決する可能性があると考えている。本件は先週土曜日に筆者が担当する事業構想大学院大学の“ITと事業構想”の授業で生徒から出てきた内容もあるが少し披露したい。
認知症患者の徘徊対策:GPS内蔵の例えば腕時計型ウェアブル端末を装着することにより認知症患者が徘徊した場合の捜索が容易になったり、帰る方向を示して誘導したり、家族が捜索モードにすると音や発光がされて補導されやすくなるなどの可能性がある。
児童の保護対策:多くの学校が携帯端末の持ち込みを制限しているが、GPS搭載、防犯音、緊急信号発信などの機能を制限したウェアラブル端末を装着することにより防犯に寄与することが考えられる。学校も規制している理由は授業に集中しないあるいは通信で外部の人と接触することにより犯罪に巻き込まれるということであり、防犯に専用特化したものは認める可能性が高いのではないかと考える。
遭難・事故対策:季節柄雪山や冬レジャーでの遭難や事故が相次いでいるが、予定している場所を離れたり、立ち入り禁止区域に入ると警告したり、警報や危険が迫っているときに知らせてくれる機能などを入れることが可能であろう。
保険会社がウェアラブル端末装着者の保険料を安くする:健康管理系のウェアラブル端末では個人の体調や食事、運動をモニターできるので適切なアドバイスを送るなどすることにより、保険の支出を安くすることが可能であれば保険料の低減という形で還元できる可能性がある。
このようにウェアラブル端末は多くの社会問題を解決できる可能性があり、社会コストを下げることができる可能性があると考える。特に児童、高齢者、障がい者などの社会的弱者の生活を助けることによる効果は大きいので、是非そのようなウェアラブル端末の登場と実現がされる世の中になっていくことを願っている。
日本の少子高齢化ということは逆にいうと課題先進国ということであり、日本メーカーもこのような課題を解決する策を発展させ世界に広げることに成長の活路を見つけることができるのではないだろうか。
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