Blog

“事業構想力の研究” 書評「できない理由をあげるより、できる方法を考える」

今回はアドバタイムズ初の書評となるが、まずお断りして置かなければいけないのはこの“事業構想力の研究”は私も属する事業構想大学院大学の清成忠男(学長代行)が書いたものである。

したがって清成先生と同じ事業構想大学院大学という新しい取り組みに関係するものとして客観性を欠いている可能性もある。また、この書は本コラムのiトレンドという題名、すなわちインターネットやマーケティングのトレンドという観点と若干離れているかもしれない。

しかし、それでも敢えて今回のコラムに本件を取り上げた理由としては本書が新しいトレンドを作る上での示唆に富んでおり、インタラクティブマーケティングやマーケティングのトレンドを考える上でも本書の考えは十分通用する部分が多いと筆者が考えたからである。

すべての事業は構想から始まる

まず” 事業構想(Project Design)” とは一体何かというところであるが、本書では事業を” 計画的に準備し、目的を達成するために実行する経済活動”ということとしている。そして「何かをやりたい」「夢を実現したい」という個人の想いから始まる事業の” 構想” 形成プロセスは” 暗黙知” なので教育されにくいとされている。その上で現在は経済社会のパラダイムシフトが進み、既存事業の陳腐化が進んでいるので新しい事業機会が増えており、イノベーションが求められているとしている。

したがって新たな成長分野が多数出現し、それに対応する第二次世界大戦以来の革新的新企業の登場が起こっているとし、その代表例としてソフトバンク、楽天、サイバーエージェントのような企業を例として挙げている。

事業構想とマーケティングの構想の共通点

では経済活動としての事業をマーケティング活動に置き換えられないだろうか? 筆者は本書を読み進むうちにこれが不思議なほどピッタリ来ると感じたのである。すなわち、マーケティング活動を形成する個人の「知ってほしい」「欲しがってほしい」「買ってほしい」「広めてほしい」という個人の思いを具現化することと重ねられないだろうか。

そして現在のマーケティングを取り巻く環境はインターネット、ソーシャルメディア、情報処理技術(ビッグデータ)などでパラダイムシフトが進み、イノベーションが求められているのではないだろうか。筆者は、本書で清成先生は様々な切り口で事業構想のプロセスを示しており、そのプロセスは用語を変えるとマーケティングの構想にも当てはまるのではないかと考えている。

事業構想策定の流れは何にでも応用可能

その中でも筆者が特に優れた流用可能な考え方であると感じたのは、事業構想策定の流れである。清成先生はそのプロセスを「事業機会」「問題把握」「アイディア」「評価と共創」「構想」という5段階を定義し、それぞれを詳しく解説している。

筆者はそのプロセスすなわち事業機会に合わせ、問題を限定し(見極め)把握し、解決するためのアイディアを創発し、アイディアを評価して共創しながら構想するプロセスはそのままマーケティング施策を策定するプロセス当てはめることができると考えている。

さらに本書ではその構想をマネージメントするためのプロセスや運営するための組織に関しても書かれている。さらにその実践例として事業構想家を10人の事例を紹介している。こちらも実に応用可能な示唆に富む内容になっているので是非参考にされてはいかがであろう。

「できない理由をあげるより、できる方法を考える」

しかし、筆者が本書で一番共感するのは清成先生と事業構想大学院大学を立ち上げた東英弥理事長の対談の中身である。事業構想大学院大学の構想そのものに至った経緯などを上げているのであそのコンセプトやプロセスはるがその中で出てくる「できない理由をあげるより、できる方法を考える」という言葉にいたく共感したのである。

実は筆者も以前よりモットーとして「出来ない理由より出来る方法を」を挙げて、これをチームに浸透させ各種施策を実現してきたという経緯がある。筆者の経験上も、不確実な変化の大きい環境の中で各種施策を実現させるにはこの発想が不可欠であるということは確信に近い形で信じているのである。

今回本書を読み込むにつれ、なぜ自分が事業構想大学院大学という事業に参画したかということをあらためて思い知らされることになった。

最後に本書の活用に関してのヒントをひとつ。本書は理論的にすぐれており、内容を熟読することにより多くの示唆が獲れると思うのであるが、難しい各種プロセスが豊富に図式化され掲載されている。

まずは、図式化されたプロセスをピックアップして考え、解らないところの解説のつもりで本文を読むとより理解しやすいのではないかと思う。またこのような方法で理解するまでの時間を短縮可能ではないかと思うのでぜひ試されてみてはいかがだろうか。

関連記事

  1. Blog

    AI(人工知能)は人類を超えるのか?

    本コラムは前回の「AISASモデル」は、AI(人工知能)時代にどう変わ…

  2. Blog

    まもなく200回と転職のお知らせ

    アドタイの連載がもうすぐ200回になります早いもので、このコラムの連…

  3. Blog

    大学生の企画力が予感させる「キュレーション・マーケティング」時代の到来

    大学生による様々な活動が活発化先週、たまたま学生の企画を審査する機会…

  4. Blog

    日本のインターネット・ソーシャル企業の躍進は本物か?

    プロ野球界でネット企業の存在感増す11月4日、ディー・エヌ・エーが“…

  5. About

    スタンフォード式生成AI Bootcamp miniありがとうございました!生成AIはツールではなく…

    2026年3月25日、26日の2日間、iU(情報経営イノベーション専門…

最近の記事 // Recent Blog

会員ログイン // Login

アーカイブ // Archive

  1. Blog

    SENSORS IGINITION 2016から見えてきた、デジタルとリアルの融…
  2. About

    ChatGPTが記憶能力を搭載
  3. Blog

    Windows 8は旧来のイメージを刷新できるか?
  4. Blog

    震災後の情報リテラシーが向上した背景とその今後
  5. About

    原油・ナフサ高騰時代の食品容器コスト対策:リサイクル材活用と「剥がせる容器」とい…
PAGE TOP

江端浩人事務所 -Hiroto Ebata International Office-をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む