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Pinterestに代表される「インタレストグラフ」活用は検索を超えるか

このコラムをお読みの皆さんであれば、Pinterest(ピンタレスト)を耳にした人も多いのではないだろうか。これは、主に写真で自分の好きなものをカテゴリーごとに登録(Pin)し、スクラップブックのように保存したり、自分の好きな人をフォローしてその人の写真(Pinboard)を見るなどの楽しみ方ができるサービスである。

2012年の3月にスタートしてから多くのユーザー、特に女性の支持を得て急成長中で、米国では現在フェイスブック、ツイッターに次いで3位のSNSサービスになっている。名称はその内容をよく表している。Pin(ピンボードに貼る、Pinboard)+Interest(興味を持っているもの)を合わせた造語だからだ。ユーザーは気に入った写真にLike(いいね)したり、自分のボードにピンしたりすることが可能で簡単に写真がシェアできるようになっている。

詳しいサービスに関してはここでは触れないが、興味のある人はピンタレストガイドというサイトを参照されたい。国内でも「セカイカメラ」で有名な頓智ドットの展開するTABやサイバーエージェントの運営するmy 365といった類似サービスが登場してきた。

ピンタレストの目指すインタレストグラフとは?

人間関係を表す言葉として「Social Graph(ソーシャルグラフ)」という言葉が使われてきたが、それはSNSが人と人をつなげるという意味においては強力な武器になってきた。最近ではリアルな人間関係から始まり、バーチャルな関係が広がってきて、ついにソーシャル上での知り合いと実際に昼食を共にする「ソーシャルランチ」という現象まで出てきている。

ではそのソーシャルグラフと「Interest Graph(インタレストグラフ)」とはどう違うのであろうか? 筆者の考えるインタレストグラフとは、興味や関心が一緒の人たちのことで、実は現実社会ではリアルでも存在しているのである。

例えばコンサートなどは「特定のアーティスト」に興味のある人たちの集まりであり、野球場は野球に興味のある人たちの集まりであり、ファンクラブなどによって「興味の対象」と「興味を持つ人」が結ばれているのではないだろうか。ただリアルのイベントと違って「興味を持つもの同士」の直感的な交流をメインに設計されているのがピンタレストの大きな特徴であろう。

同じものに対する興味を持つ人同士は話も合う可能性が高いということはよく考えると明白だが、なかなか現実の世界ではきっかけがない。たとえ興味対象が一緒でもコンサートのように一方的に対象との関係を可視化しているだけであると上下関係ができてなかなかファン同士の交流は生まれないのであるが、「興味対象が写真」でしかもピンボードに多数乗っている場合には「興味を持っている人」のほうに関心が向き、交流が生まれやすいのであろう。そして、直接会話をする必要がないために交流もしやすい。

興味の対象は具体的なものでもよいし、色使いやデザインのテイストだったりする。個人が自分の好きなものを写真を通じて可視化することで、より視覚的で感性的な共感を生むことができるのではないだろうか? その意味では興味だけでなく色彩や形状の「趣味」も似ている人といえるだろう。

このような特徴を持つピンタレストは外部サイトへの誘導に向いているようである。例えば以下のグラフはグーグルの検索連動広告などを除くサイトのトラフィックの影響を示したものであるが、ピンタレストが大きく伸びてBingやツイッターを抜いている。これは興味や趣味が似ている人の掲示Pinした写真を見ると、そのものをもっと見たくなったり、詳しく知りたくなってしまうということを意味しているのではなかろうか?

実際に最近の米国の調査ではこのような効果が検証され始められており、日本の楽天も7月に第三者割当増資を引き受ける形でピンタレストに出資し、自社のサイトにPin itボタンを設置し始めたのである。筆者は、出資の理由のひとつはこのインタレストグラフによる誘導の強さを見越しているのではないかと考えている。

インタレストグラフ × ビッグデータは検索を超えるか?

突然ではあるがここで、今までのインターネットを牽引していた「検索」とは何かちょっと立ち戻って考えてみようと思う。皆さんは「インタレストグラフ」は最近出てきた言葉や概念であるので関係ないと思うのかもしれないが、「検索」とは「今現在の自分の興味を可視化したもの」ではないだろうか。ここで重要なのは「今現在」という概念である。検索は今興味がある(すぐ知りたい、すぐ見たい)から行うのであって、ひょっとすると、一度解決すると二度と興味がなくなるかもしれないのである。しかし、ピンタレストのインタレストグラフは「今現在」という概念も含まれるが、検索で見られる時間の概念を越えて、より長期的な、すなわち本質的な興味・趣味(= Interest)ではないのであろうか。

つまり、マーケティングで考えると「検索」は「今○○に興味がある人」を探すことができるが、インタレストグラフを活用すると「根本的に○○に興味がある人」を捜し当てることができると考えられる。もしこの仮説が正しければ、たとえばその根本的なインタレストグラフによる消費行動などを分類し、ほかの様々なデータ、例えば属性、時間、場所、購買履歴や閲覧履歴、その時のソーシャルメディア上のトレンドなど“ビッグデータ”と掛け合わせてその人に提供すべき消費につながるリンクやコンテンツを提供するなどということができるようになってくるかもしれないと考えられる。そして、その検証を続けることによってマーケティングの精度も高くなるのではないだろうか。

「検索」は消費者が能動的に入力しなければ実行されない、しかし、インタレストグラフを活用した広告はユーザーの能動的な入力を必要としない。ということは「検索」する前にその対象を当ててしまえば「検索」より前の段階で消費者を捕まえることができ、かなり有効なマーケティング手段として活用できるのではなかろうか。インタレストグラフが可視化されてきて、ビッグデータを分析する土俵ができた今、インターネットが始まって以来はじめて「検索」を超える可能性のあるマーケティング手法が確立されるかもしれないのである。このように、インタレストグラフを活用したSNSがどの程度まで拡大するのか注目したい。

江端浩人「i(アイ)トレンド」バックナンバー

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