先週、6月5、6日にデジタルマーケティングカンファレンス「アドテック九州」が福岡国際会議場にて初開催された。筆者の主催者へのヒアリングによると、九州で行われたマーケティング系のカンファレンスでは今までの九州での集客の記録(数百人)を大きく上回り、2日間での集客は3500人に及んだという。クロージングキーノートパネルに登壇した福岡県出身の堀江貴文氏は、立ち見の出ている会場を見渡し「たかがインターネット広告の九州で行われたカンファレンスでこんなに人が集まっているのは時代が変わった」と述べていたほどである。筆者の参加した感想は、濃淡はあるものの総じてセッションや出展の内容も良く、聴衆の反応も良かったのではないかと思える。
そんな中、筆者は2日目の最初に行われたキーノートパネルディスカッションにモデレーターとして登壇した。パネリストは佐賀県武雄市長の樋渡啓祐氏とワタナベエンターテインメント会長の吉田正樹氏である。樋渡氏が市長を務める武雄市はTSUTAYAの運営母体であるカルチュア・コンビニエンス・クラブが指定管理者として運営委託等を行う武雄市図書館で知られている。樋渡市長は武雄市出身で総務省での官僚経験を生かしながら数々の常識を覆す施策で時の人となっている。先述の武雄市図書館もリニューアル1カ月で10万人の来場者を記録してテレビメディアなどでも相当取り上げられている。マスコミでの発言や市議会でのリコールなどの報道を見ていると若干熱の入った発言をされることもあるようで筆者もこの点を注意する必要があるとみていた。吉田正樹氏と筆者は昨年iMedia Brand Summitというイベントで一緒に基調パネルにパネリストとして登壇し、その後も色々な場面でお会いするなど親交を深めさせていただいた関係なのでこちらは上手くまとめる自信があった。
筆者は今まで、いくつかのパネルでの失敗例を見てきている。例えばパネリストの一人がしゃべりまくり「暴走」するのを止められなくなったり、トークがセッションのテーマと離れて全くまとまりがないものになったり、パネリスト同士が感情的になってしまう事例などである。今回はそうならないように事前にかなりの勉強をした。樋渡氏、吉田氏のブログやfacebook, twitterをフォローすることはもちろん、インターネットの記事やテレビなどで紹介された事例も極力見るようにした。この時威力を発揮したのが24時間2週間丸々番組を録画でき、しかもキーワードを入力すると自動録画をしてくれる機械であった。昨年のロンドンオリンピック時日本を不在にするために報道内容をチェックするために購入したものであったが、テレビ番組の編集は短時間で全体が解るように構成されているので非常に役に立った。
さて、肝心のセッションであるが登壇者のお二人の人間力と持ち味が上手く出せたおかげで予想以上に上手くいったと思っている。その中で一番アドテックとの関連を感じたのは樋渡氏の「修正力」の話であった。顧客である市民のベネフィットを最大にするために各種の施策を行うのであるが、施策を行った後に数字を見直したり、ソーシャルメディアなどを通じて“直接つながった”市民の声を拾ってその施策を修正してゆくという精神が、A-Bテストなどの広告効果促進のやり方に通じているのではないかと感じた。ともすれば一度作った仕組みをなかなか変えない行政の手法として、そのような考え方を持ち込んだ効果はかなり大きいのではないだろうか。また新しいことを起こすときに“競争”Competitionするのではなく、得意な民間企業などと“共創”Collaborationをしすることを継続したいとも話されていた。吉田氏は樋渡氏を単なる炎上マーケティングではなく、ソーシャルメディア上で考え方や発言の軸がぶれないことで一貫した“ストーリー性”が担保できることを評価し、“個人のエネルギー”からコンテンツ力は生まれるとして樋渡氏のカリスマ性を上手く表現されていた。お二人に共通されていた認識としては“心地よいというバリュー”がソーシャルメディア上など広がるコンテンツには不可欠であることであった。またソーシャルメディア上で色々な意見があることは(程度にもよるが)むしろ良いことであり“批判”的な意見をしている方は逆に何らかの関心があるので意見を聞くことにより施策を良くしたりその人をファンやサポーターに転換できるということであった。さらにお二人とも一番怖いのは何も反応のない“無関心”であると いう認識で、ネット選挙が解禁されれば少なくとも関心を持つ人が増える可能性があるので投票率は上がる可能性があるということであった。
非常に楽しく“心地良い”パネルでまだまだ書きたいことでいっぱいであるが、細かい内容は、数々の記事や両パネリストのブログなどに書いてあるのでそちらを参照いただきたい。(写真は樋渡氏のブログからの転用)また機会があれば是非続編もやってみたいと思うのであった。
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