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位置情報を活用するゲーミフィケーションの実践例が続々登場

楽しみが加わりネットとリアルの融合が活性化

携帯やスマートフォンでは、GPSや基地局情報を利用してユーザーの位置情報を取得することが一般化している。以前は乗り換え検索や、ルート検索であったそれらの機能が、カーナビのようにGPS機能が搭載されたことによってNAVITIMEやiPhone Mapsのような経路検索サービスに進化した。それらは機能として、いかに早く正確に目的地に到達できるかということに注力をして、開発されたものである。

しかし、単に“機能”を追求するだけでなく、その過程を楽しむサービスも登場している。その代表例はコロプラ社が運営する「コロニーな生活PLUS」やライブドア社の運営する「ロケタッチ」やネクスト社の「ロココム」といったサービスであろう。それらのサービスは移動や特定の場所に“チェックイン”(端末で位置や店舗を登録)することにより色々な事象が起こることになっている。例えばサービス内で育成する都市が成長したり、ゲームを進める上で必要なアイテムやポイントを得ることが出来たり、その場所特有の称号を手に入れたり、一番多く訪問するとその場所のオーナ的立場になれるといった具合である。

それらのサービスは、以前このコラムの記事「1億2000万人がゲーマーになる!? 「ゲーミフィケーション」理論とは」 や 「続・ゲーミフィケーション、消費者に受ける理由とは?」 で書いた「ゲーミフィケーション」であり、ロケーションベースサービス(LBS)と呼ばれている。市場調査会社のシード・プラニングが今年9月に発表した日本でのモバイルLBS市場の成長予測レポートによると、LBS市場は、2010年から2015年の間に3.4倍の成長が見込まれるとしている。 2010年の430億円から、2015年には1470億円に拡大するという。

 

※詳細はこちら

以前より、リアル店舗を活性化するために現在地の近くのクーポンなど発行する事例は存在してきたが、ここに来てより進化した形での店舗などとの事例が二つ出てきた。一つがゆめみ社により日本版が開発されて11月1日から展開された“My Town”であり、もう一つが、著者の関わっているコカ・コーラ社の“ハピネスクエスト”である。My Townの特徴は、チェックインした場所でアイテムが手に入るだけでなく、その建物そのものが入手でき自分の町に加えることができるということである。既にゆめみ社は大手クライアント9社とサービスで提携し、今後展開先として既に3社を確保しているという。My Townは全米で400万人以上の会員がおり、ゆめみ社は日本用にカスタマイズし展開しているという。参加会社はこの取り組みにより店舗への送客効果を期待しているという。
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自販機と「友達」になる仕掛け

一方、コカ・コーラ社が11月14日に事前登録を開始した“ハピネスクエスト(ハピクエ)”は、コカ・コーラの自動販売機と友達になってもらうゲームである。利用はするが個人的な関係性の薄い街中の自動販売機に、個別の名前や性格をつけ、友人のようにコミュニケーションしてもらうというコンセプトで企画したものである。自動販売機とのコミュニケーションは携帯電話あるいはスマートフォンやタブレットなどの端末で行われ、登録した自動販売機からメールが届くという具合である。

12月5日以降、色々な自動販売機にチェックイン(ハピクエでは“挨拶をする”に近いコンセプト)したり製品を購入することで、ユーザーはポイントやアイテム、バッジやクーポンなど様々な特典が与えられる。そして自動販売機の中から数台(当初3台)を“お気に入り(フレンド)”として登録し自分好みにカスタマイズし育成できるほか、そのうちの1台をMy自販機(ベストフレンド)として登録すると、その自販機から毎日いろんな情報を含んだメールが届くようになる。

筆者としてはこの「名前」をつけるというのがこのプログラムのポイントであると考えている。自動販売機の名前は1000種類以上用意しており、それに加えて個別認識のための番号1000を用意している。まだ、プレートの設置は始まったばかりなので名前がついたプレートを見かけることは少ないだろうが、皆さんは街角で自分や家族、知人の名前と同じ自販機を発見したらどう思うか。企画した側からすると、製品の購入は別として、その自販機を登録したくなることを期待している。しかも、その名前は1000種類もあるので、自分や家族の名前の自販機と出会う確率は相当低いはずである。例えば、知人の名前の自販機を発見した場合、その人とソーシャルメディアでつながっていれば、教えたくなるのが人情であろう。また、例えば自分の好きな有名人の自販機を発見した場合なども、思わず登録したくなるのではないだろうか。結果的にコカ・コーラ社の自動販売機を探し始める、あるいは最低でも街中で見かけたときに意識を向けることにつながると期待できる。

ただし、あるユーザーにとってメールが送られてくるMy自販機(ベストフレンド)の名前や相性が良くない場合もあるだろう。あるいは配偶者や恋人がいる人の場合には、知らない名前からメールが送られてくることが快くないと思われる可能性もある。そのような事態を避けるためにメールが送られてくるMy自販機(ベストフレンド)だけは「ニックネーム」をつけることができ、性格も変更できるようにサービスをスタートする予定である。

このように実売り上げに直結する可能性があるゲーミフィケーションに関してはこれから色々と試行錯誤を行いながら洗練させてゆくことが必要であろう。皆様もこれらのサービスを是非体験し、気がついたことや意見があればどんどんいただきたいと思っている次第である。

江端浩人「i(アイ)トレンド」バックナンバー
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