Blog

広がる動画配信プラットフォーム普及の鍵はお金をかけたコンテンツなのか?

有力コンテンツの収集に注力するグーグル

米グーグルは動画配信のGoogle TVをAndriodアプリケーションに対応したと10月28日に発表し、同日傘下のユーチューブはマドンナやReutersなど100チャンネル増やすという発表を行った。しかも、Business Insider によるとコンテンツ獲得のためにグーグルはチャンネルパートナーに1億ドル以上の前金を支払ったといわれている。

それ以前にもYouTubeは米国、欧州、日本で動画クリエイターを集めて“YouTube NextUp”というコンテストを行っている。これは、ビデオを投稿してきたクリエイターを選抜し(日本の場合は7月に10組)賞金を支払って(日本の場合は約200万円)、5日間の研修キャンプで(日本は9月に実施)他のクリエイターと交流するというものである。これはユーチューブに良質な動画を供給するクリエイターを育成する目的と言われている。上記の2つの取り組みで、米グーグルはいかにお金をかけたコンテンツを重要と考えているかが読み取れるのではないかと思う。

日本でも地上デジタル放送への完全移行により、コンテンツがますますデジタル化され、色々なプラットフォームに乗るようになってきた。ビデオカメラなどもデジタルのフォーマットで記録されそのままパソコンで取り込み、ユーチューブなどにアップロードできる機能が増えてきたのである。そしてその競争も激しくなっている。米アップルもApple TVを展開し、インターネット経由のテレビでの動画視聴・課金モデルを展開しており、日本でもアクトビラなどが同様のサービスを展開している。やはり見られるコンテンツは名作や話題作の映画であるという。

隠れた面白い動画も有力コンテンツに

このような動画サービスには基本的には2通りのビジネスモデルがある。片方は有料課金視聴、もう片方は広告モデルであり、その組み合わせもある。Apple TVやアクトビラは主に有料課金モデルであり、そのため広告は入らないのだが、Google TVは傘下のユーチューブなども含め広告が入るモデルだ。ただ、広告の内容は多岐にわたり既存のテレビCMとは違うものも出てきている。たとえばGoogle TVのアプリ内や番組表内広告であったり、ユーチューブに見られる画面広告や、クリック誘導を行う広告、あるいは商品の購買や会員登録に基づく成功報酬型の広告である。ただ両者が共通していることは、それはお金をかけた“作られた”コンテンツをベースにしていることである。

大型画面で見るコンテンツは“Lay Back”つまり受動的に見るものが多い。しかも映画やドラマのようなものであれば、邪魔されずに静かに一気に見たいというものであろう。したがって、邪魔されないために有料で購入するということも考えられよう。だが、果たしてそのような良質なお金をかけたコンテンツに積極的にアクションを起こす必要のある広告をプレースすることは合っているのであろうか? これははなはだ疑問である。

クリエイターが時間とお金をかけたもの以外でも、面白いものがネット上には多数存在する。それは、偶然取れたものや動物や子供が出てくる動画、中には一見、偶然のようであるが実は計算されて作られたものなども含まれている。筆者はむしろそのような動画を自ら見つけて楽しむことが多い。それは動画を見るということ以外にも積極的に自分が探す、そして色々な情報を駆使して探し当てたときの満足感があるからである。つまり、自分は「Web上で面白い物を見つけるゲーム」をしているのであり、見つけて友人に広めることは「勝利宣言している」のではないだろうか?

この、新しい感覚が昔話を聞かされて育ってきた世代と、ゲーム特にアドベンチャーや自分が主人公となり冒険を進めるRPGで育った世代との違いであるかもしれないと考えている。能動的に娯楽の世界に入り込んでいく人に動画の課金コンテンツを売るのは難しいが、自分の能力を増すアイテムの課金は容易なのである。良質な画像を開発できるクリエイターはもちろん重要であるが、それに加えコンテンツの消費をいかにゲーム的なエンターティンメントとしてユーザーに提供できるかということも今後重要な要素になってくるのではないかと考えているのである。

江端浩人「i(アイ)トレンド」バックナンバー
もっと読む

関連記事

  1. About

    ChatGPTよりGoogle検索が得意なこと

    ChatGPTが騒がれているが、実はGoogle検索の方が得意なものは…

  2. AI

    Microsoft、AIによる画像生成エンジンを発表

    Microsoftは、DALL-Eを活用したAI画像生成器の範囲を広げ…

  3. Blog

    2016年、デジタルマーケティングのトレンドを占う

    【前回】顧客に“無料”を期待させるマーケティングは正しいのか?(2)」…

  4. Appearances

    World Marketing Summit Tokyo 2019のアンバサダーに再度任命されました…

    マーケティングの父と言われている、フィリップコトラー博士が来日して実施…

  5. Blog

    【参考記事】クーポン共同購入、米社参入で市場活性化

    《このコラムは、新聞「アドバタイムズ」2010年8月25日発行号に掲載…

  6. About

    RAG: ブランドマーケターが知るべきこと

    Shelly Palmerのメールマガジンに珍しく「ブランドマーケター…

最近の記事 // Recent Blog

会員ログイン // Login

アーカイブ // Archive

  1. Blog

    世界的ブームを起こす秘訣!?ソーシャル先行型コンテンツの広がり方
  2. Blog

    なかなか光が当たらないが重要なWeb施策:電子メール、SEM
  3. Blog

    「半沢直樹」のヒットの背景を考えてみた(3)
  4. About

    生成AIを導入したのに、生産性が下がる?イルグルムが「使われないAI」を事業変革…
  5. Blog

    ピザ生産遅延、無料クーポン行列、集配遅延はなぜ起きたのか?
PAGE TOP