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理想的なリキッド&リンクド・コンテンツ:「アナと雪の女王」ヒットを分析して(2)

前回のコラムで紹介した時がピークだと思っていた「アナと雪の女王」(以下文中“アナ雪”)の勢いが止まらない。

いまだに映画興行収入のトップを走っている。しかもこのタイトルにあるように理想的な「リキッド&リンクド」コンテンツということがこのブームを存えさせているというようなデータも出てきていると筆者は感じているので今回はそれをシェアしたいと思う。

公開から11週たっても増している映画と歌の人気

映画としてのアナ雪は公開してから11週間、一度首位を譲ったもののずっとランキング首位を保ったまま興行収入200億を突破し、日本で公開された映画のベストスリー「千と千尋の神隠し」(304億円)「タイタニック」(262億円)「ハリー・ポッターと賢者の石」(203億円)に割って入りそうな勢いある。

そして、歌の方のランキングを見てみるとアルバムではサウンドトラックが徐々に順位を上げ1位を独走、またLet It Goが収録されたMay JによりカバーアルバムがGW中は2位に喰い込むなど大変検討している。

シングルチャートでもダウンロード数で主題歌であるLet It Goが松たか子、Idina Menzel, MayJの3バージョンがベスト10入りしているほか徐々に松たか子+神田沙也加「生まれてはじめて」や神田沙也加の「雪だるまを作ろう」なども上位にランクインするという現象が起こっているのである。

筆者はこの現象の一旦はこの映画のリキッド&リンクドな性質にあると考えているので以下で説明したい。

コンテキストを保ったまま、コンテンツの広がりがみられる

リキッド&リンクドのコンセプトはこちらのコラムにも書いたが、「ImpressionよりExpression」ということがいえよう。

ユーザーが自らの手で生みだし、拡散していくものを指す“Expression”のが、企業が自らのコンテンツである“Impression”の発信量を上回り、トータルとしてのコンテンツ力も大きくなるというものである。

右の表は2011年のAd Age digital Conferenceでウェンディ・クラーク氏が発表したものであるが、YouTubeに掲載されたある時期のコカ・コーラのコンテンツの内訳は、全体の約80%がユーザーによるExpressionという事である。

企業が生み出すコンテンツの4倍以上もユーザーが作り出すような時には、その内容(Context:コンテキスト)が重要になるのである。

つまり、ユーザーが生み出すExpressionはブランドのコンテキストを反映したものにならなければ逆効果になってしまう。この点はリキッド&リンクドを活用する場合には非常に重要なポイントとなってくるのである。

 

アナ雪のYouTubeなどソーシャルでの「歌」を中心とした広がり

アナ雪は色々なルートを通じて広がっていると考えられるが、再生数を測りやすいYouTubeで見てみると、主に映画の中の“歌”が拡散していることがわかる。

まず世界的には英語の主題歌であるDisney’s Frozen “Let It Go” Sequence Perfor med by Idina Menzelは2億3890万回(2週間前は2億1270万回)見られているお化けコンテンツとなっている。

日本でも、一緒に歌おう♪『アナと雪の女王』「Let It Go<歌詞付Ver.>」 松たか子 が2週間前の2240万再生から現在では3540万再生まで伸ばしており、ユーザーが作ったものでは Do You Want To Build a Snowman? – Cover Little Anna In Real Life が1960万再生から3160万再生へと伸ばしており、その他にも色々な曲がユーザーによってカバーされ高い再生回数を誇っているのである。
 
Do You Want To Build a Snowman? – Cover Little Anna In Real Life

Maddie and Zoe sing “Let It Go” from Disney’s “Frozen”が1800万再生、Good Looking Parents Sing Disney’s Frozen (Love Is an Open Door)が1330万再生などである。

Maddie and Zoe sing “Let It Go” from Disney’s “Frozen”

Good Looking Parents Sing Disney’s Frozen (Love Is an Open Door)

日本でもこのような動画が多く上げられておりYouTubeで「アナと雪の女王」を検索してみただけでも約20万近い動画が検索された。

一般の消費者が口パクしているだけの動画でも中にはアナと雪の女王「とびら開けて」<日本語> Love is an Open Door 口パクのように300万回近い再生数を稼いでいるものや、小さい女の子がアカペラで歌っているだけのビデオが44万回も再生されているリサさんの「アナと雪の女王」雪だるまつくろう♩等のようなビデオも多数存在するのである。

アナと雪の女王「とびら開けて」<日本語>  Love is an Open Door 口パク

リサさんの「アナと雪の女王」雪だるまつくろう♩

映画館でみんなで「歌う」という新たな試み

しかも、ディズニーはこの「歌う」ブームを自ら仕掛けていたのである。まずは4月17日に“みんなで歌おう!「アナと雪の女王」”イベントを実施し、全国から応募したファンを招待し、その模様を積極的にPRした。

筆者もその模様をワイドショーなどで目撃したが素晴らしい施策であったと思う。多くの招待者は主人公になりきった衣装で有明の会場に集結し歌を歌い、その模様が多くの媒体で取り上げられた。

「Let It Go!」とは自由に力を状出してよいという意味であり、観客が歌っている姿はまさに映画館で歌うというタブーを破って己を解放した瞬間ではなかっただろうか?

また、GWには映画館で字幕付きの「みんなで歌おう」バージョンの上映を行なった。こちらは観客や映画館の慣れの問題もあり、必ずしも思惑通りに行かなかったケースが多かったようだが、試みとしては今後も大きな意味を残すものになったのではなかろうか。

歌うという行為は究極の自分事化であり、今までもダンスと共に多くのキャンペーンで実施されて成功している。歌の一番の利点はブランドの世界観が崩れないこと(一部悪意のある替え歌などは除く)であり、ユーザーが自分事化したコンテンツを広げてくれる格好のインフラである。しかも一瞬のブームではなくロングテール型のコンテンツであるので多くの人が長期間に渡りコンテンツに接触していき、映画の中の曲が順番にヒットしていくような現象がみられるのではないだろうか。このような意味で「アナと雪の女王」は筆者が今まで見た中では最強の理想的なリキッド&リンクドのコンテンツであると考えるのである。

Let It Go」関連記事はこちら

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