Blog

創業者支える「経営のプロ」の存在――米IT企業の役割分担

米IT企業の創業者にかかわるニュースが相次いで飛び込んできた。アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズ氏が病気で休養するとのニュースに加え、グーグルの次期CEO(最高経営責任者)に共同創業者の一人、ラリー・ペイジ氏が返り咲くということである。両社とも史上最高益を更新しているが、ニュースとしては業績よりも創業者人事のほうがはるかに大きく取り上げられている。

米国のIT企業は多くのカリスマ創業者を生み出してきた。代表的な例としては、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏やヤフーのジェリー・ヤン氏、デルのマイケル・デル氏、最近ではザッポスのトニー・シェイ氏やフェースブックのマイケル・ザッカーバーグ氏などが挙げられる。彼らに共通するのは、独特のスタイルと未来に向けた強力なビジョンがあり、プレゼンテーションで多くの人を魅了する力を持つことだろう。企業にとっては強力な創業者がいることで、多額の広告宣伝費をかけずに新製品発表できるというメリットがある。

これらの創業者は、強力なビジョンを打ち出して企業のみならず業界全体を引っ張ってゆくパワーを持つが、それは経営能力とは別の力とも言えるだろう。グーグルの例のように、創業者がプロの経営者であるエリック・シュミット氏に経営を託し、成長を早める選択をするようなことが往々にして行われている。それはMBA(経営学修士)をはじめ、プロの経営者や経営メンバーを育成する仕組みが存在し、創業者をサポートする仕組みが備わっているからであろう。

実際フェースブックの経営陣にはハーバードやスタンフォードのMBA保有者が複数存在している。このような強固な経営基盤を持っているので、創業者は日常業務を離れ、会社や業界をリードしてゆくビジョンを育て上げ、それをプレゼンテーションするスキルを磨くために多くの時間を割くことができるのである。

日本のIT業界にも多くの創業経営者がいる。ソフトバンクの孫正義社長や楽天の三木谷浩史社長らがいわゆるカリスマに当たると思うが、これは例外的といってよいだろう。日本の企業ではやはり“ビジョン”を構築するということより、経営に専念することが求められることが多い。そして、経営のプロを流動的に創業者のビジョンに結びつける仕組みが整備されていないので、米国のように次々とカリスマ創業経営者が育たないのではないだろうか。

逆に言うと、そのような仕組みを整備すれば、世界に出てゆくチャンスはまだまだあるのではないだろうか。

江端浩人「i(アイ)トレンド」バックナンバー

もっと読む

関連記事

  1. Blog

    100万人の個人情報が流出、スマートフォンアプリの管理は誰の責任か?

    アンドロイドはアプリの事前審査なしインターネットをめぐる動きで先週問…

  2. Blog

    任天堂—DeNA、テレビ朝日—サイバーエージェント、バンダイナムコの著作権開放にみる協業の時代

    スマートフォンの活用が日常化し、生活者のメディア接触時間に占める比率が…

  3. Blog

    Windows8のローンチを通じてクロスメディアでの複合コミュニケーションの重要性をあらためて実感

    マイクロソフトに移籍してからというもの、連載を1回更新しただけでしばら…

  4. Blog

    Windows 8は旧来のイメージを刷新できるか?

    起動の速さに驚きマイクロソフトのWindows 8 Consumer…

  5. Blog

    【動画コンテンツ配信サービスのゆくえ】(1)テレビ番組はどこで配信すべきか?

    日本マーケティング協会の主催で、テレビとインターネットの融合をテーマに…

  6. マーケティング視点のDX

    Blog

    11年ぶりに本を出版いたします。

    【正式に解禁】江端11年ぶりに本を出します。「マーケティング視点のDX…

最近の記事 // Recent Blog

  1. マーケティング視点のDX

会員ログイン // Login

カテゴリー // Category

アーカイブ // Archive

  1. Blog

    ネット選挙解禁で何が変わるのか?
  2. Blog

    ソーシャルメディアは何に効くのか?アドビのリサーチをベースに考えてみた。
  3. Blog

    教育の現場でのソーシャルメディア活用と情報リテラシーについて実験中
  4. Appearances

    Jagat Summer Fes 2019に登壇いたします。
  5. Blog

    まだ始まっていない日本航空の「どこかにマイル」の大ヒットを予想する理由
PAGE TOP